国語の答えは、だらだら考えるより、さっさとヒントを出して直させているのですが[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

長文が苦手で人の心を読み取る力はまったくありません。文章を読むのが遅いので時間切れになります。国語の答えは、だらだら考えるより、さっさとヒントを出して間違えたところを直させるようにして、多くの問題を解かせるようにしてはみてはいるのですが、子どもに速読の力がないため、結果は同じような気がしています。


小泉先生のアドバイス

もしかしたらヒントを出しすぎているかもしれません

「さっさとヒントを出して」「多くの問題を解かせるようにして」という部分が少し気になります。実際の状況を拝見しないと何とも言えませんが、もしかしたらヒントを出しすぎているかもしれません。問題によって多少異なりますが、国語は算数よりも「ヒント」はすぐに出さないほうが効果的だと思います。それはなぜかと言えば、算数に比べて国語のほうが「解く手順」が少ないため、ヒントが答えに直結してしまう可能性があるからです。

たとえば算数の場合、考えあぐねている生徒に次の手順として「ここに補助線を引いて考えてごらん」とヒントを出しても、まだまだ答えには遠い場合が多いでしょう。その次の手順としては、相似や合同で考えるか、図形の性質(例:補助線を引くことで現れた二等辺三角形の性質など)を使うのか、あるいは三角形の面積と底辺の比を使うのかなど、考えるべきことはたくさんあります。
ところが、国語の場合はどうでしょうか。「登場人物の気持ちを考える問題」であれば、たとえば「ほら、『握りしめていた封筒がふるえている』のだから?」とヒントを出せば、「怒っている(気持ち)」とすぐに出てきてしまうでしょう。国語はヒントと言うよりも、答えに限りなく近いものを与えてしまいがちなのです。

算数や国語の解法の特徴について、もう少し詳しく説明します。算数は国語に比べて「解く手順」は多い(長い)のですが、示される「材料」は比較的少ない科目です。ここで言う「材料」とは、問題内の「条件」のことです。国語にしても算数にしても、「条件」は問題(文)の中にあるのですが、算数は一つの問題の分量が少ないので条件を限定しやすいのです。
これに対して国語は、問題を解くための「条件」が分量の多い問題文の中に広がっています。国語が苦手なお子さまにとっては、それこそ無限の広さに感じることでしょう。そして、その中から必要な条件を選び出す力が、国語における「考える力」の一つと言えます。にもかかわらず、ヒントとして安易に条件を示してしまうと、「考える力」が育たず、成績もなかなか伸びなくなってしまうのです。

それでは、国語ではどのようなヒントの出し方が良いのでしょうか。たとえば先ほどの例で言えば、まず生徒に考えてほしいのは「どの心情表現に注目すればよいか」です。まずはその部分を、本文から探してもらうように指導します。しかし、なかなかわからないようであれば、次のヒントとしては「ここからここまでの間にあるよ」などと範囲を限定するなどして探しやすくするのが良いでしょう。そして、どうしてもわからないようであれば、注目すべき心情表現を示して、そこからどのような気持ちがわかるかを質問します。
このように、ヒントはできるだけ小出しにしながら、少しずつお子さまの考える力を育てていきます。当然、さっさと間違い直しはできませんし、多くの問題も解けません。しかし、結果的にはこちらのやり方のほうが国語力は付くと思います。国語の学習は、「量」より「質」です。

なお、ご質問の中に「速読の力がないため結果は同じような気がしています」とありますが、読むのが遅いというのはまた別の話ですから、また違った方法で速く読む力を付ける必要があると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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