2011年度入試で何が問われたか<国語>

まずは、記述問題が中心の麻布・武蔵・開成・栄光学園・桜蔭についての分析です。



■麻布中学校 国語の出題傾向

麻布は毎年、物語文が1題だけ出題されます。「友人(友情)」「父母子」「兄弟姉妹」「生命・死」などのテーマが頻出です。記述問題が中心であり、この傾向に変化はありません。2010年度は寓話(ぐうわ)が取り上げられるという新傾向が見られましたが、今年度はスタンダードな問題に戻りました。外国作品が数年に一度取り上げられることがあります。上記のような頻出テーマに関する文章に親しんでおくと、たとえば受験生が一人っ子であれば「兄弟姉妹」がテーマの文章や、文化の違う外国作品などを理解するうえで役立ちます。
また、麻布の出題の特徴として、物語の「テーマ」を浮き彫りにしていく設問構成になっていることが挙げられます。対策としては、先に挙げたような頻出テーマの理解と、記述の基本をきちんとマスターしておくことが必要です。問題の最後で「物語の大きな流れをとらえているか」を問われることが多いので、選択肢問題を、物語の流れの「指針」として活用しながら解き進めていくとよいでしょう。
得点の目安としては6割以上を目指しましょう。



■武蔵中学校 国語の出題傾向

武蔵は例年、物語文1題の出題でしたが、今年度の出題文はなだいなだ『わが輩は犬のごときものである』で、説明的文章でした。合格者平均点が、昨年度の60.3点から71.7点に上がりましたので、来年度は恐らく物語文で、問題も難化するのではないかと予測します。
麻布と同様、頻出テーマは「友人(友情)」「父母子」「兄弟姉妹」「生命・死」などです。記述問題が中心の出題ですが、武蔵は解答スペースに特徴があります。記述問題に関しては、字数制限も区切られた解答欄もなく、問いの左のスペースに書けるだけ書いてよいという形式です。また、内容面での特徴は「気持ちなどをいかに多面的にとらえられるか」を見ようとする出題が多いので、「人は、一度に様々な気持ちを持つ」ということを理解しておくことが必要です。
対策としては、頻出テーマについての理解と、多様な見方を身に付ける、ということです。また、字数が多くなる場合は、わかりやすい答案を作成することを心がけるようにしましょう。



■開成中学校 国語の出題傾向

開成は、問題構成が頻繁に変化する学校です。2011年度は、物語文1題、説明的文章1題の出題でした。記述問題6問、その他が2問と、出題はほとんどが記述問題です。全般的な国語力を問う問題が出題されますが、超難問ということではなく、比較的素直な問題が多く見られます。
開成は対策が立てにくい学校であり、国語に対するオールラウンドな力を養うことが大切です。筆者の言いたいことをつかみ(=大きく読む)、設問に答える(=精密に読む)というオーソドックスな練習が有効です。



■栄光学園中学校 国語の出題傾向

説明的文章1題、物語文1題に、漢字15問の出題でした。問題文は短く、内容は比較的読みやすいものです。読解問題は記述が中心で、2011年度は、記述問題7問、選択肢問題2問、その他1問の出題でした。また、説明的文章では、今年度多く見られた「弱者・病人」をテーマとした文章が取り上げられました。
記述中心の出題への対策としては、「記述パターン(=文章の組み立て方)」の習得と、文脈の流れを正しく追って解答を作成することに気を付けるということです。



■桜蔭中学校 国語の出題傾向

説明的文章1題、物語文1題で、記述問題中心の出題です。物語文では、これまでは「友人(友情)」「父母子」「祖父母」などが頻出テーマでしたが、今年度は「戦争」をテーマに、難しい内容を正面から問う記述問題が出題されました。問題文としては例年に比べて読みやすいものでしたが、超難問が難問になったという程度です。
対策としては、難度の高い文章を深く読む練習をするということです。問題文が適度に易化するということは、受験生全員にとって難しい「超難問」よりも差が出やすくなる、ということです。
また、文章を200字程度にまとめる長文記述対策を行っておきましょう。構成を考え、「ここまでを60字くらいでまとめる」など、大まかな分量を決めてから書き始めるようにするとよいでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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