最初のほうに書かれていることがわからなくなってしまう[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

長文を読んでいるうちに、最初のほうに書かれていることがわからなくなってしまう様子。理解しながら読むにはどうすればよいのでしょうか? 記述問題など、いちいち読み返していると時間がかかってしまい、試験のとき時間が足りなくなるようです。


小泉先生のアドバイス

「何の話か?」を考え、「こんな話ではないか?」と仮説を立てながら読み進める

一つひとつの言葉はしっかり読んでいるのに、読み終わると内容をうまくまとめられない。読んでいる途中で、最初のほうに書かれていることを忘れてしまう。何度も読むので、問題をやる時間が足りなくなってしまう。
特に、説明文や論説文が苦手な生徒の悩みだと思います。彼らは、問題文をどのように読んでいるのでしょうか。なぜ、上手に読めないのでしょうか。
ここで、彼らに近い状態を体験したいと思います。以下の例文を読んで、いったい「何の話」なのかを考えてみてください。


(1)あまりうまくいっていないと感じている人が多い。
(2)性格や行動を理解するとうまくいくようになる。
(3)友達ではなくリーダーになることが大切。
(4)叱るよりもほめることのほうが効果的。
(5)他の人を傷つけないためにも忍耐力が必要。


さて、何の話かわかりますか。(1)は、「クラスや職場の人間関係」のことでしょうか。(3)は、「クラブのキャプテン」の心得ですかね。(4)は、「ヤル気を出す方法」として良く言われることです。(5)のようにまわりに気を使い過ぎると、こちらがストレスを感じますね。
ということで、一つひとつの文はわかっても、さて全体で何を言いたいのかなかなかわかりません。これが説明的文章が苦手な生徒たちが持つ、実感のひとつだと言って良いでしょう。そして、なぜ彼らがそのような状況になるかと言えば、「何の話」なのかを「考えずに読んでいる」「意識していない」あるいは「読み飛ばしている」からです。

さて、ここで先ほどの例文に戻ります。一つひとつはわかっても、全体としては意味がはっきりしなかった文です。ここではっきりさせるためには、「何の話」かを提示すれば全体が明確になります。
たとえば、「犬のしつけ方」の話であると前置きしたらどうでしょうか。一つひとつの文はもちろん、全体としてもすっきり理解できたと思います。つまり、(1)日本人は、どうも犬のしつけが下手なようです。(2)犬の性格や行動、つまり習性を知ることでしつけがうまくいくようです。(3)犬は集団行動を好みますから、リーダーには服従します。飼い主がリーダーになりましょう。(4)犬のしつけでも、ほめることは大切です。(5)他の人を噛んで傷つけたら大変ですから、忍耐強くしつけしましょう……ということです。
今回の例文では「何の話」かを隠しましたが、通常の文章ではわざと隠しているということはもちろんありません。しかし、これから「○○の話をします」というような明確な書き方はしませんから、生徒達はつい読み飛ばしてしまうのです。では、どうすれば良いのでしょうか?
それは今回例文を読んでいただいた時のように、「何の話か?」を常に考え、「こんな話ではないか?」と仮説を立てながら読み進めるということです。最初はかなりの努力が必要ですから、難しい文章になると頭がしびれてきて、読み進めるのが嫌になるかもしれません。しかし、そこで「何の話か?」を考えながら読むことをやめてしまうと、「どこに何が書いてあるのか?」「全体として何の話なのか?」「筆者は何を言いたいのか?」がつかめないまま終わってしまいます。
勝負は最初の5行~10行です。ここでだいたいの内容を予想しながら、文章の展開によってはその予想を変えながら、最後の一文字を読み終えた段階で、最初と最後が矛盾なくつながれば「読めた」ことになります。もし最初の5行で「???」になったら、もう一度最初から読む気持ちが大切です。
また、文章に慣れることも必要ですから、多くの論説文を読んでいきましょう。最初は易しいものから、だんだんにレベルを上げていくことがポイントだと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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