随筆や説明文になると、とたんに点数が悪くなります[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子(性格:論理的)のお母さま


質問

4科目の中で、国語は得意な分野になっていると思います。読書好きなこともあるからか、特に物語文に関しては、点数も良いですし、本人も自信を持っております。しかし、随筆や説明文になると、とたんに点数が悪くなります。その差がものすごく激しいです。物語文でこれだけ点数がとれるのに……と、はがゆい気持ちになります。文章を読むという作業に、随筆や説明文と、物語文とでは、本人の中でどのように変わってしまうのでしょうか。


小泉先生のアドバイス

「読み取る」作業を実際に体感させること

文章を読んで内容を理解するには、あらかじめ≪何を理解すれば良いのか≫をわかっていたほうが理解しやすいと思います。お子さまが物語文が得意なのも、そこから何を読み取れば良いのかわかっていて、正しくつかめるから点数が良いのでしょう。読み取るべきものがわかっていないと、ただ文字を目で追うだけで内容が頭に入ってきません。あるいはあまり重要でないことに意識がいってしまい、大切なことをつかみそこねてしまいます。

ここで、随筆で読み取るべきものとは何かを考えてみます。たとえば筆者が通勤の途中、道の片すみに咲いていた名も知らぬ花を見つけ感動したとします。この感動は、「この大都会にも自然が生きているんだ」とか、「季節はめぐっているんだ」という心の動きかもしれません。そして筆者は、この「感動」を読者に伝えるべく随筆を書いたとしたら、読書が受け取るべきものはその「感動」ということになります。
文章にはこの「感動」の他に、名も知らぬ花を見つけるまでの出来事や、都会には四季が感じられない理由などが述べられているかもしれません。もちろんそういったこともちゃんと読み取る必要はありますが、すべては「感動」に結びついているということを意識すれば、文章は実によくまとまって頭の中に入って来ると思います。

さて、ここで大切なことは、お子さまに「随筆は筆者の感動を読み取れば良い」と単に教えるだけではなく、「読み取る」作業を実際に体感させることです。つまり実際の随筆を題材に、一緒に文章を読みながら、「何に感動しているのか?」どこが「事実なのか?」を探していくと良いでしょう。随筆には物語文的な随筆と論説文的な随筆がありますから、「感動」というよりも筆者の「心の叫び」と表現したほうがあたっている文章もありますが、いずれにしても「筆者のイイタイコト」です。これを探し理解することが、すなわち文章を理解するということであり、テストで良い点数をとるための第一歩と言えます。

学校でも塾でもこのような理屈は教えているとは思いますが、子ども達に伝わりづらいこともあるようです。それは、先ほど申し上げたように、体感するというステップが抜けているからかもしれません。一対一の指導のほうが、効果が出やすい内容と言えるかもしれません。お母さんに指導していただきたい理由が、ここにあります。
実際のやり方としては、まずはお子さまの使っている教材の中から、お母さんの気に入った随筆を探してください。読んでみて筆者の「イイタイコト」がスッと入って来るものが良いでしょう。探せたら、それをお子さまと一緒に読んで、「筆者のイイタイコトはここだよ」とか「これをつかめば良いんだよ」などを伝え、お子さまに実感させてください。この時、単に「ここだよ」とグイグイ引っ張る指導よりも、「どこかな? 一緒に探そう」というような、寄り添う指導のほうが効果的です。
このような経験をすることで、お子さまは随筆のとらえ方を実感し、徐々に一人で読めるようになります。たとえば、自転車に乗ったことのない子に、乗り方を言葉で説明しても、その子は乗れるようにはなりません。実際に自分で自転車をこがなければ、自転車に乗れるようにはならないのです。最初は後ろを支えてあげると、すぐに乗れるようになる子もいますしそうでない子もいますが、やがて一人で乗れるようになります。文章を読めるようになるというのも、これと同じだと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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