説明文や随筆などになると途端に点数が取れない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小5女子のお母様

質問
漢字や語句、四字熟語についてはとても好きで点数も良いのですが、文章の読解は好きな文章と嫌いな文章によって点数にとても開きがあります。小説や詩は好きですが、説明文や随筆などだと途端に点数が取れません。

小泉先生のアドバイス
説明文や論説文において自分が得意な「テーマ」を持つ

「男の子は説明的文章が得意で、女の子は物語文が得意」というのが一般的な傾向です。これからすると、お子さまが説明文のほうが苦手なのも無理からぬことかもしれません。
説明的文章とは、説明文や論説文などのことです。説明文は「何かを説明する文章」であり、論説文は「何かについて主張する文章」です。そして説明文よりも、論説文のほうが苦手なお子さまが多いようです。
また随筆は大人にとっては気軽に読める文章ですが、小学生にとってはわかりづらいものだと思います。入試に出てくる随筆の多くは、大人向きに書かれたものですから当然かもしれません。説明文や随筆が苦手なお子さまの場合、「説明文→論説文→随筆」の順に苦手を克服していくのがよいでしょう。

さて、説明文は文章中にある「問い」や「答え」などを見つけることで、筆者のイイタイコトをつかむことが大切だと言われています。「問い」や「答え」を見つけるためには、「具体例」や「引用」などと明確に区別し、文章を≪構造的≫にとらえることが必要です。大学受験の予備校では、このような≪構造的なとらえ方≫を指導している場合が多いと思います。
しかし、小学生にはなかなかこれが難しい。≪構造的≫に読みなさいと言っても、文章を2、3行読み始めた時点で、すでに目は文字を追っているだけという状況になりがちです。説明文が嫌いなお子さまは、文章を読むこと自体を無意識に拒絶してしまうのです。それでも無理に読もうとしますが、内容が頭の中に入ってきませんから、同じところを何度も読み直します。そして「何となくわかったかな?」というところで問いに答えますから、なかなか良い点がとれません。「大切な箇所に線を引け」とか「理論的な展開を考えろ」と言われても、その前に「拒絶している」状況をなんとか改善する必要があるのです。

このような状況を脱却する一つの方法は、説明文や論説文において自分が得意な「テーマ」を持つことだと思います。「テーマ」ごとに文章を読むことで、その「テーマ」に関する知識を蓄えることです。
人は誰でも、自分が知っている内容であれば理解することは比較的容易にできます。知らない内容であれば、読みづらいのは当然でしょう。しかも、説明文や論説文特有の文章の運びに慣れていないお子さまであればなおさらです。しかし知識がある程度あれば興味もわきますし、文章についていくこともできます。

中学校入試における説明文や論説文のテーマとしては、「自然・環境」「動植物」「言語・コミュニケーション」「文化・習慣」などが頻出しています。「言語・コミュニケーション」「文化・習慣」はかなり読みにくいでしょうが、「動植物」であればわりと読みやすいと思います。書いてある内容は、多くの場合「動物や植物に関する驚くべき生態」ですから、そのつもりで読めば、すんなり頭に入ると思います。読み慣れてきたら、「問い」「答え」「具体例」「引用」などを色分けして、文章の構造を浮かび上がらせるのもよいでしょう。

「動植物」の次は、「自然・環境」をテーマにした文章をまとめて読んでみましょう。「自然の多様性」の大切さや、「保護」や「保全」の違いなどが語られています。筆者の主張も出てきますから、説明文から論説文のちょうど良い橋渡しになると思います。それに慣れてきたら、「言語・コミュニケーション」「文化・習慣」とテーマを広げていってください。それぞれのテーマの知識がたまってくると、難解な「文化・習慣」などの文章も読みやすくなると思います。ここまで読めるようになると、「テーマ」に関係なく説明文や論説文が読みやすくなっているでしょう。なお、拙著『中学受験 必ず出てくる国語のテーマ』(ダイヤモンド社)は、各テーマに関する知識をまとめてありますので、参考にしていただければと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A