説明文が嫌い どうしたら抵抗感をなくせますか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5女子のお母さま


質問

説明文が嫌いです。どうしたら抵抗感をなくせますか? 評論など、本人が読むというので買った本も、読んでいません。小説は大好きです。


小泉先生のアドバイス

≪評論文のタネ≫を教えてあげてください

説明文や評論文が嫌いな生徒は少なくありません。嫌いな理由としては、言葉が抽象的で難しいとか、論理的な展開についていけないなどですが、そもそも内容に興味が持てない場合も多いと思います。あるいは、評論文に見られる独特の表現方法に拒否反応を示す生徒も少なくないでしょう。
一般的に、評論文は小学生の皆さんが読むとかなり違和感を覚える文章である可能性があります。それは、「ふつうの人はこう考えるだろうけど、自分(筆者)はこう考えるね。すごいだろう!」という書き方をしている場合が多いからです。このように書かれると、小学生は二つの理由で読む意欲をなくします。

一つ目の理由としては、筆者が何か威張っているように感じるからです。最近の小学生は、日常的な他者との関係において、自分が主張したり、他人の主張を聞いたりすることにあまり慣れていないようです。主張が激しくならないように、押さえているように思います。しかし、評論文では一方的に主張してきますから、「読みたくない」ということになるのでしょう。生徒さんと話していても、筆者が「偉そうだ」とか「ひどい言い方をする」ということで評論文を嫌う発言をよく聞きます。そんな場合は、「自分の意見を率直に述べているのだから、表現が強くなる場合もある」と筆者を擁護してあげてください。

もう一つの理由としては、常識とされていることを覆そうとする筆者の考え方に反感を持つからです。先ほど述べましたように、筆者は「ふつうの人の考え方」ではなく、それとは違った主張をすることで良い評論文を書こうとします。たとえば、「電車では携帯電話は使わないようにしよう」とか、「お年寄りには席を譲ろう」などと主張しても、当たり前すぎて良い評論文とは言えません。そうではなくて、「最近の老人は元気なので、下手に席を譲ろうとすると機嫌を悪くされるおそれがある。よほどお疲れでない限り、席は譲らないほうが得策である」くらいの意見を書かないと読んでもらえないということです。
大人であれば、「そういうこともあるな」と納得し、そうであれば≪良い評論文≫として成功しているわけです。しかし、そのような文章を小学生がストレートに読むと面くらいます。今まで正しいとされてきたことを否定されるのですから、それはびっくりします。「この人、何言っているの?」という感じになり、最後には読み進める気力を失います。
大人であっても、自分の信念と逆の内容の文章を読まされるのはやはり苦痛でしょう。ましてや多面的な見方にまだ慣れていない小学生にとっては、正しいと信じていることがどんどん否定されれば、それは面白くないと思います。その生徒が真面目であればあるほど、いわゆる≪良い評論文≫を読むのがつらくなることでしょう。

もしお子さまにこのような様子が見受けられるのであれば、評論文、特に≪良い評論文≫というのは、「普通の見方を前提に、ちょっと違った方向から見て、こんな意見もあると読者に示すものである」という≪評論文のタネ≫を教えてあげてください。この一言で、案外すっきりするかもしれません。「なるほどね。そういう見方もあるね」と余裕をもって筆者の主張についていけるようになるとか、あるいは「でも、ボクはこう思うな」と反論できるようになってくればしめたものです。
子どものころは、一つの正解を求めたがるものですし、一方からしか物事を見られないものです。しかし、正解は必ずしも一つではないことを知り、多面的に物事を見られるようになることが精神的に成長するということです。≪評論文のタネ≫に慣れることで、評論文に対するアレルギーが徐々に緩和してくることと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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