保護者の腕の見せどころ[「過去問」の効果的な取り組み方 第4回]

「過去問」ノートを作っておく

「過去問」に取り組む際に、解けなかった問題、間違えた問題だけを切り貼りした「過去問」ノートを作ることが有効です。学校ごとよりも分野ごとにまとめるほうがいいのです。時間がなくなった直前の復習に、弱いところだけが抽出されたこのノートの効果があります。
正答率が一けたという問題以外で、もしまだ克服できていない問題が残っていたら、塾の先生に尋ねるなどして、本番前に完全に攻略するようにしましょう。


解答の癖を直しておく

「過去問」を解くということは、実戦的な力を磨くだけでなく、普段気が付かない癖を直すチャンスでもあるのです。字がうまい・下手ではなく、見やすい正確な答案作りも入試のうち。お子さまが設問の読み違い、ケアレスミスなどをしていたら、本番でそれを繰り返さないよう直してください。
問題用紙・答案用紙を見ていくと、学校ごとに解答形式が異なることに気付きます。問題用紙に答えを書く学校もあれば、解答用紙が問題用紙とは別になっている学校もあります。設問を読んでいくと、社会や理科の用語についてひらがなでもいい学校もあれば、漢字指定の学校もあります。算数では、「g」とか「cm」といった単位が解答欄に書かれている学校もあれば、自分で記入する学校もあります。自分の受験する学校がそれぞれどのような解答形式なのかを前もって知り、それに合わせた勉強をしていくことが大切です。
お子さまが、設問の意図どおりに答えられているか、記述解答は字数制限に合っているか、漢字指定なのにひらがなで答えていないか、トメ・ハネ・ハライなどは正しく書けているか……、そうした点でお子さまがミスしていたら、1点が合否を分ける入試ではもったいない話です。このようなミスをどれだけ防げるかが、保護者の腕の見せどころです。


「過去問」の採点は厳密でなくていい

「過去問」採点は保護者がするケースが多いと思いますが、採点しようにも困ることがあります。たとえば国語などの記述式問題では、採点に立ち往生することが多いでしょう。入試採点者の採点基準までは「過去問」冊子に載っていませんし、出版社によって解答が微妙に異なっている場合もあるからです。
実際には、出題する学校の多くが記述式問題に部分点を設けています。キーワードが入っているか、文脈を理解できているか、文末が要求どおりになっているかなどの採点基準が設けられています。親が採点する場合、そこまではわかりませんから、大ざっぱに見て点数は厳密でなくてもいいでしょう。
点数にとらわれすぎないことが大切です。むしろ、少しずつ解答に近付いてきたとか、点数が取れてきたとか、出題傾向を把握できてきたことのほうが意味は大きいのです。どうしても気になるなら、塾の先生に採点してもらうのも手です。


入試前日は「過去問」を眺めて自信をつける

入試直前の頃ともなると、問題を見ただけで解ける問題か、時間をかければ解けるのか、解くのが難しい問題か、ある程度予測ができるようになっています。問題を見たら、素早く判断し、解く順番を見極めることです。時間内にいかに点数に結び付けるかが勝負ですから、難問に時間を使うのではなく、解ける問題から確実に解いていきましょう。入試で満点を取る必要はありません。
入試前日には、これまでがんばってやってきた「過去問」を眺めるのがいいでしょう。取り組み始めた頃とは違って、皆解答が目に浮かぶはずです。自信を持って本番を迎えられます。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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