どのような工夫をすれば、量的なものをイメージできるようになるのでしょうか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子のお母さま


質問

図形全般がニガテです。計算でもなんでも、「イメージすること」がニガテのようです。どのような工夫をすれば、量的なものをイメージできるようになるのでしょうか? 以前相談所で簡易検査をしてもらったときも、やはり、同様のことを言われました。代わりに言葉で何かを伝えたり、くみ取ったりする分野は得意です。


小泉先生のアドバイス

経験的に基準を持つことで、その数量がよりイメージしやすくなる

「量的なものをイメージする」というのは、数字を見て、それがどのくらいの「速さなのか?」「体積なのか?」あるいは「面積なのか?」を実感できるということだと思います。自分の中に基準となるものがあり、与えられた数字と比べることでその数字の大きさを判断していくのです。ですから、基準がしっかりと認識されていないと、与えられた数字も適切にイメージできない場合があります。

たとえば、不動産屋のチラシに、「広々とした20畳のリビング」という広告があったとします。このチラシを見た人は、20畳という大きさをイメージできなければ、広々としているかどうかなかなか判断できません。この場合、1畳=約1.62m² という数字が知識としてあったとしてもあまり役立ちません。それに対し、自分の住んでいる家のリビングが12畳であることを知っている人であれば、「うちのリビングの1.6倍以上ある。広いなー」というイメージをより簡単に持てます。この人は基準として、12畳のリビングがどのくらいの広さなのかを経験的に実感として持てているからです。

さて、算数でもまったく同じことが起こり得ます。数式を暗記しているだけでなく、経験的に基準を持つことで、その数量をよりイメージしやすくなるのです。
ここでは例として、「速さ」の場合を考えてみましょう。人が歩く速さは、一般的に大人で分速80mとされます。しかし、これだけでは「知識」として知っているだけで、イメージはそれほど広がりません。実際にご自宅と駅までの距離を道路マップなどで測り、実際にかかった時間で割ってみて、自分たちの歩く速さを出してみたらどうでしょう。たとえば、自宅と駅間が1400mで、それを歩くのに20分かかったら1400÷20=70より、歩く速さは分速70mということになります。そして、そういった作業を実際に行うことで、いくつかの基準を経験的に身に付けることができます。すなわち、1400mという距離を自宅と駅の間の距離ということで実感できるようになれるのです。また、分速70mという自分が普通に歩く時のスピード感も実感できるでしょう。
そして問題を解く時も、こうした基準を持っていることは非常に大切です。たとえば、「(歩いている)ダイスケ君の速さは?」という問題に対して分速120mという答えが出たら「これは少し速すぎる。計算間違えたかな?」という目安が持てるようになるのです。

これは、体積や容積の場合でも同じです。単に、1リットル=1000cm³ という知識を持っているだけではなかなかその量をイメージできませんが、牛乳パック1本(1リットル入り)と気が付けば随分イメージしやすくなります。さらに具体的に考えるなら、牛乳パックの実寸を図ってみて、実際にその容量を出してみるのもよいでしょう。
このような作業をとおして数量の基準を経験的に身に付けることは、応答力を身に付ける有効な手段でもあると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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