この夏をどう過ごすか 第1回

高校受験生にとっては、夏をどう過ごすかが合否を大きく左右します。夏は暑いだけに気が緩むとついだらけてしまいがち。有効な夏にするために、保護者はどう向き合えばいいのでしょうか。


夏休みも普段と同様に過ごすことが鉄則

夏休みに一番気をつけていただきたいことは、これまでどおりの時間に起き、きちんと3食取り、夜更かししないということ。午前中から始まる夏期講習に通うのであれば、普段学校に行っている時と同じ生活がそのまま続きます。ですが、夏期講習に通わず、家で勉強するという時は、ずるずる起きる時間が遅くなりがち。起きるのが遅くなると、それにつれてだんだん夜更かしになり、生活リズムが狂ってきます。必然的に勉強する時間が減少し、能率も落ち、学習効果も半減します。「早寝早起き朝ごはん」の原則は、夏休み中も絶対に崩さないということを家中で守りたいものです。

ですから、夏休みに入る前に、本人と一緒に、夏休みの学習目標と長期計画と日課表を作ってください。合同説明会や志望校のオープンキャンパスなどの日程も調べて、長期計画に盛り込むようにしてください。

<夏期講習に通う期間>
夏期講習も、家で予復習するかどうかで効果はまるで違ってきます。ですからこの期間は、夏期講習でやるテキストの予復習に全力投球することが、学習効果を上げるうえで一番有効です。夏期講習のテキストが事前に手に入っている場合は、本人が苦手な分野については教科書や参考書の該当部分に目を通すなどして、事前にある程度理解を持っておきたいものです。夏期講習は普段の授業よりスピードが速いので、予習して臨まないと理解不能のままで終わる心配があるからです。

<夏期講習のない期間>
夏期講習期間以外の学習目標ですが、ただ漫然と勉強したのでは学習効果は上がりません。この夏休み、何に絞って勉強するか決めましょう。これは、本人のこれまでの学習状況によって違ってきますが、一般的には“不得意教科の克服”と“これまでの復習”が2大テーマになります。定期試験や実力テストの結果をもとに、本人と相談しながら前半は何をやるか、後半は何に使うか決めてください。つい真新しい教材に手を出したくなりますが、過去に解いたものをもう一度やるほうがずっと身につきます。

<お盆の時期>
お盆の時期は、地方によって違いますが、夏期講習がないところも多いです。この期間も夏期講習期間中と同じようにびっしり根を詰めると、秋になって息切れし、続かなくなることがよくあります。せっかく時間に余裕がある時期なのですから、勉強は午前中と夜だけにし、午後は好きなことに充てるなど、メリハリをつけた過ごし方をしたいもの。思い切って1日どこか遠くに出かけることも、気分転換になります。それがそのあとのやる気アップにつながったりします。

今の子は昔の子と比べて情報をたくさん持っているので、何となくいろいろな経験もしているように錯覚してしまいますが、実際には実体験は乏しくなっています。映像を見て知識としては知っていても、自分で体験したこととなるととても少ないのが実情です。
長期宿泊するなどという大げさなことをしなくても、できることはいくらでもあります。どこに出かけるかは、つい保護者が提案しがちですが、まずは本人にやってみたいことを聞いてみてください。本人の口から何も出てこないようでしたら、普段の様子から興味を持っていそうなジャンルの博物館、スポーツの試合、演奏会、映画などを候補として挙げてみてはどうでしょう。またせっかく時間があるのですから、山や海、湖、川など自然の中に出かけることもおすすめです。早起きすればけっこう遠くまで行けるものです。
好きなことを思いっ切りさせてあげる時間、そうしたものをまだ持っていなければ、興味を持って打ち込めるものを見つける時間にしてほしいのです。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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