2010年度入試で何が問われたか<国語>

■学校別分析

まずは、記述問題が中心の麻布・武蔵・開成・栄光学園・桜蔭についてです。


麻布中学校

麻布の問題の特徴は、毎年、物語文が1題だけ出題されることです。「友人(友情)」「父母子」「兄弟姉妹」「生命・死」などのテーマが頻出です。記述問題が中心であり、この傾向に変化はありません。麻布では外国作品が数年に一度出題されることがあり、2006年度はフィリッパ・ピアスの『ロープ』から出題されました。外国作品は、文化が違いますので、子どもにとっては読みにくく、読み慣れておくことが必要でしょう。
麻布は、物語文で頻出テーマも絞り込みやすいため、比較的対策が立てやすい学校です。ただし、ほとんどが記述問題ですから、記述の書き方は十分にマスターしておきましょう。なお、得点の目安としては60点満点の問題で35点以上をめざすとよいでしょう。問題の最後に「物語の大きな流れをとらえているか」を問われることが多いので、選択肢問題を物語の流れの「指針」として活用しながら、解き進めていくとよいと思います。また、麻布の選択肢問題は比較的簡単に作られていますので、ここで決してまちがえないように注意しましょう。

武蔵中学校

物語文1題の出題でした。武蔵も麻布と同様、「友人(友情)」「父母子」「兄弟姉妹」「生命・死」などのテーマが頻出です。記述問題が中心の出題ですが、武蔵は、解答スペースに特徴があります。記述問題に関しては、字数制限も区切られた解答欄もなく、白紙のスペースに解答しなければなりません。
また、内容面での最大の特徴は「一場面における多様な心情」が問われることが多いことです。これは武蔵に個性豊かな子どもが多く、個性を伸ばす教育をしていることとも関係が深いと思われます。
対策としては、物語文のテーマをきちんととらえてしっかり読みこなす力をつけることと、多様な見方を身に付けることです。また、解答欄が広いので、一文にすることにこだわることなく、わかりやすい解答を心がけるとよいでしょう。

開成中学校

開成は、問題構成が頻繁に変化する学校であり、2010年度は、物語文1題、説明的文章1題に言葉の問題が出題されました。記述問題が中心の学校ですが、超難問というよりも、全般的な国語力を問う問題が多く出題されます。
開成の場合、傾向が毎年変わるので対策が立てにくいのですが、基本を大事にした記述力の養成が重要でしょう。「自分なりに考えて述べなさい」というような小論文的な設問もありますので、問題内容を理解することだけでなく、それに対する自分の意見を持つことも心がけましょう。また、文章読解でなくても、言葉の問題で「考えさせる問題」が出題されており、思考力を試されます。

栄光学園中学校

説明的文章1題、物語文1題に漢字15問でした。問題文は短く、内容は比較的簡単です。読解問題は記述中心です。問題文が短いだけに、記述の答案では「類推」や「言い換え」が必要な場合が多いです。具体例を読んで、それを一般論にまとめる力が要求されます。
栄光学園の物語文は海外の作品が多く、2010年度もそうでした。外国作品は、文化の違いにより子どもにとって読みにくく感じることもありますので、読み慣れておくことが必要でしょう

桜蔭中学校

随筆1題、物語文1題でした。記述問題中心であり、小学生には難解な問題文の内容を正面から問われますので、かなり難しく思える出題です。物語文は「友人(友情)」「父母子」「祖父母」などが頻出テーマです。難度の高い文章を深く読む練習が必要です。また、文章の構成を考え、分量を決めてから書き始めるというような長文記述対策も行っておくとよいでしょう。
なお、桜蔭の特徴として「文芸論」をテーマにした文章が出題されることがあります。2010年度も随筆での出題がありました。このテーマの問題文は難問の場合が多いので、対策が必要です。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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