2010年度入試で何が問われたか<国語>
(3)出題文のテーマは「自然・環境」「動植物」が復活(テーマ分析)
出題文をテーマ別に分類してみると、ベスト3は、「友人(友情)」「言語・コミュニケーション」「自然・環境」でした。ベスト10までのテーマで、全体の約64%の問題が網羅できますので、これらのテーマについての知識を持っていることは、かなりの強みとなります。
【例年どおり頻出のテーマ】
「友人(友情)」は全体の17.4%で、昨年に引き続き第1位です。ごく一般的なものもありますが、中には「イジメ」や「疎外感」、あるいは「恋」や「あこがれ」など、お子さんによってはわかりづらいものもあります。たとえば、サレジオ学院(男子校)では、西川美和『1983年のほたる』が出題され、これは小学生の女子のあこがれや自己嫌悪を描いている文章ですが、男子にはなかなか理解しにくいでしょう。どのように指導するか、考える必要があります。
「言語・コミュニケーション」は、全体の9.3%出題されて第2位となりました。今や、説明的文章の最頻出テーマといってよいでしょう。対策として取り組んでおきたい内容としては、「日本語の特徴・日本人と欧米人の違い」「言葉の働きについて」「言葉の使い方・コミュニケーションのとり方」「言語・コミュニケーションの危機」などが挙げられると思います。
国語は、特に論説文の場合、そのテーマについてのある程度の知識がないと読み込むことが困難になります。逆に言えば、知っているテーマについての出題はチャンスでもあります。頻出のテーマについての基本的な知識を身に付けておくことが大切です。
【出題が増加したテーマ】
「自然・環境」は、昨年、今後注目したいものとして挙げましたが、今年は2位にアップしました。同系列のテーマである「動植物」と合わせると、全体の14.9%出題されたことになります。これらは、比較的小学生にもなじみが深く読みやすいので、試験問題の易化につながる場合が多いテーマです。この2つのテーマが、これ以上ランクを上げることはないと思われますが、説明的文章に慣れるための題材としても読み込んでいきたいテーマです。このテーマをスタートとして、論説文問題の練習を始めるとよいでしょう。
【今後注目したいテーマ】
「父母子」は、5位でしたが、子どもにとって親子関係は基本です。2011年度以降、再び出題が増える可能性があります。また、2010年度は頻出の10テーマに入らなかった「文化習慣」ですが、問題文の難度を上げようとした時に、取り上げられやすいテーマです。2010年度の問題文は、全体的に難度が非常に高いものはありませんでしたが、その反動として2011年度以降「文化習慣」をテーマにした問題文の数が増加するかもしれません。
(4)頻出作家数は昨年とほぼ同じ
頻出作家数(3校以上に出題された最頻出作家:5名、2校以上に出題された頻出作家・10名)は、昨年度とほぼ変化なしでした。
2010年度の頻出作家と作品
最頻出作家(3校以上に出題された作家)
森浩美 | 『夏を拾いに』(駒場東邦・暁星・大妻・筑波大学附属) |
木村秋則 | 『リンゴが教えてくれたこと』(早稲田実業学校中等部・開智・東洋英和女学院中学部) |
重松清 | 『その年の初雪』(栄東<東大クラス選抜>)、『友だちの友だち』(頌栄女子学院)、タイトル不明(光塩女子学院) |
太宰治 | 『思ひ出』(開成・桐光学園)、『犠牲』(女子学院) |
新美南吉 | 『嘘』(湘南白百合学園)、『おぢいさんのランプ』(実践女子学園)、『狐』(学習院女子中等科) |
頻出作家(2校以上に出題された作家)
有吉玉青 | 『ぼくたちはきっとすごい大人になる』(東邦大学付属東邦・武蔵) |
井上ひさし | 『あくる朝の蝉』(早稲田)、『大きな広場』(桐朋) |
小野正弘 | 『オノマトペがあるから日本語は楽しい』(晃華学園・高輪) |
如月かずさ | 『サナギの見る夢』(明治大学付属中野・立教女学院) |
佐藤多佳子 | 『黄色い目の魚』(西武学園文理・本郷) |
外山滋比古 | 『初めに言葉ありき 文化と言語教育』(攻玉社)、『思考の整理学』(青山学院中等部) |
竹田青嗣 | 『中学生からの哲学「超」入門』(立教新座・大妻) |
中沢けい | 『うさぎとトランペット』(公文国際学園中等部)、『楽隊のうさぎ』(早稲田実業学校中等部) |
堀江敏幸 | 『プリン』(品川女子学院中等部)、『トンネルのおじさん』(晃華学園) |
豊島ミホ | 『夜の朝顔』(春日部共栄・聖光学院) |
例年よく出題される作家に、重松清、石田衣良、あさのあつこ、瀬尾まいこなどがいますが、2010年度に分析した問題中、これらの作家の中で出題されたのは「重松清」のみでした。出題される問題が多様化しているということです。3・4年生までは、言葉に親しみ、語彙(ごい)を増やすという意味でも読書はぜひおすすめしたいですが、5・6年生になったら、これまでの読書経験を生かして、演習問題や過去問に数多く取り組むことが効率的な対策になるでしょう。