2008年度入試で何が問われたか<算数>
難関国・私立中学受験指導に定評のある先生が、2008年度入試の出題傾向を分析してくださいました。
中学入試に欠かせない算数の力を伸ばすヒントが満載です。
6年生は直前期のポイント確認に、5年生以下は今後の傾向把握に、ぜひお役立てください。
首都圏10校の徹底分析<算数>
首都圏10校の入試問題を、1問1問、難易度、要求される能力、目新しさの3つの軸から分析。その中から、合否を分けた問題、合否に影響のなかった問題、低学年でもじっくり挑戦させたい問題はどの問題だったのかを、宮本算数教室の宮本哲也先生にお話しいただきました。
開成中学校・筑波大学附属駒場中学校・麻布中学校・栄光学園中学校・駒場東邦中学校・武蔵中学校・桜蔭中学校・フェリス女学院中学校・女子学院中学校・雙葉中学校の分析をご紹介します。
(以下は、森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの各先生の講演を抄録したものです。)
開成中学校
大問4題、小問8問の構成で、試験時間は60分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっています。合格に必要な得点率は75%。丁寧に作られており、解答用紙を見ながら解きやすくなっています。
大問3(点の移動の問題・グラフ)(2)は、(1)のグラフが役に立ちます。グラフなしで解こうとすると難しくなります。大問4(点の移動の問題・条件整理)(1)(2)は易しいですが、(3)は面倒くさくて非常に難しいです。(3)をまちがえてしまっても、他をすべて正解すれば問題ありません。大問1(条件整理)は面積を除けば小学校1年生でも挑戦したい問題です。
合否を分けた問題は大問1です。「考えられるものすべて」という問題は、時間がかかるので、ある程度で見切りをつける必要があります。書きもらしのないように注意が必要です。
<2008年度入試 合否を分けた問題 開成中学校 大問1>
それぞれの面積が27cm² 、9 cm² 、3 cm² 、1cm² の4個の円があります。これらの円周が、互(たが)いに触(ふ)れることのないように4個すべてを並べ、その並べ方によって、次のような計算を行います。
(1) | 並べ方によって、計算の結果はどのような値(あたい)をとることができますか。値(あたい)の大きい順にすべて答えなさい。 |
(2) | 計算の結果が20になる並べ方を解答用紙の解答欄(らん)にすべてかきなさい。ただし、円と円が互(たが)いに外側にあるか内側にあるかが同じ並べ方は、1つの並べ方とします。円は大小関係がはっきりわかるようにかいてあれば、コンパスを用いなくても構いません。なお、解答欄(らん)はすべて用いるとは限りません。 |
筑波大学附属駒場中学校
大問4題、小問12問の構成で、試験時間は40分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっています。合格に必要な得点率は80%。
大問1(条件整理・数の性質)は筑駒中でおなじみの問題です。(1)は樹形図で5回まできちんと書き出しましょう。書き出さないと苦しみます。(1)を丁寧に書き出せれば、(2)(3)もできます。低学年にもおすすめの問題で、大きな紙に書かせるといいでしょう。また、大問3(点の移動・面積比)もおなじみの問題です。(2)は計算が面倒ですが、クリアすべき問題です。(3)は発想の転換が必要です。合否を分けた問題は大問4(速さ)ですが、筑駒の問題としてはちょっと物足りない感じがします。ダイヤグラムを書けば、(1)から(3)まで一気に解けます。
<2008年度入試 合否を分けた問題 筑波大学附属駒場中学校 大問4>
学校から公園までの道の途中(とちゅう)に、A地点とB地点がこの順にあります。
花子さんは、午前9時に徒歩で学校を出発し、公園へ向かいました。途中A地点で7分間休み、B地点でも12分間休みました。
太郎くんは、午前9時20分に自転車で学校を出発し、途中休まずに公園まで行き、そこで、7分間休んだ後、学校に向けて公園を出発しました。
この間、午前9時28分にA地点の手前のP地点で、太郎くんは花子さんを追い抜きました。
また、太郎くんは公園を出発してから10分後にB地点を通過し、そのときちょうど花子さんがB地点に着きました。
次の問いに答えなさい。
ただし、太郎くんの自転車の速さと花子さんの歩く速さは、それぞれ一定であるとします。
(1) | 太郎くんの速さは花子さんの速さの何倍ですか。 |
(2) | P地点とB地点の間の距離(きょり)は、B地点と公園の間の距離の何倍ですか。 |
(3) | 花子さんが公園に着いたのは午前何時何分ですか。 |
麻布中学校
大問6題、小問12問の構成で、試験時間は60分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっています。合格に必要な得点率は75%。ミスは2題までにおさえなければなりません。
最初の関門は、大問2(割合・濃度)です。(1)は単純な濃度の問題ですが、(2)(3)はひとひねりされています。また、大問3(速さ)は問題は簡単ですが、計算が非常に面倒で、計算力が問われます。大問4はパズルのような問題です。かけ算ができれば低学年にもおすすめの問題です。合否を分けた問題は大問5(立体図形・表面積)です。誘導的に作られているので、解きやすいですが、(2)ができるかできないかで合否が分かれたものと思われます。
<2008年度入試 合否を分けた問題 麻布中学校 大問5(2)>
たて3cm、横4cm、高さ5cmの直方体があります。
この直方体の面のうち、2辺の長さが
3cmと4cmの長方形の面を面A、
4cmと5cmの長方形の面を面B、
5cmと3cmの長方形の面を面C
とします。次の問いに答えなさい。
(1) | この直方体を面A、面B、面Cに平行な面で、それぞれ1回、1回、2回切って、小さな直方体をつくります。
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(2) | この直方体を面A、面B、面Cに平行な面でそれぞれ(ア)回、(イ)回、(ウ)回切ったところ、小さな直方体が90個でき、これらの直方体の表面積の合計は462cm²でした。(ア)、(イ)、(ウ)に当てはまる数を答えなさい。 |
栄光学園中学校
大問4題、小問8問の構成で、試験時間は50分。昨年度と比較すると、出題の難易度はかなり上がり、大問数は2題減りました。合格に必要な得点率は50%。難しくなりすぎて算数では合否の差がつきづらかったのではないかと思われます。
全体的に斬新さが目立ち、問題を見てもどう取り組んでいいのかわからず動揺した受験生も多かったと思われます。しかしどの問題も斬新でおもしろいので、受験勉強として時間無制限で取り組むのにおすすめです。合否を分けた問題は大問3(立体図形・展開図)です。斬新な図形の問題ですが、展開図を丁寧にかけば解けます。
<2008年度入試 合否を分けた問題 栄光学園中 大問3>
3辺が3cm、4cm、5cmの直方体があります。
図のように1つの頂点Aを中心にして、この頂点Aを含(ふく)む3つの面に半径3cmの円と、2つの面に半径5cmの円をえがきます。このとき、BD、CEの長さはそれぞれ4cmと3cmになります。
この図の弧(こ)と辺によって囲まれた斜線(しゃせん)部分の面積を求めなさい。
ただし、円周率は3.14とします。求め方も書きなさい。
駒場東邦中学校
大問4題、小問14問の構成で、試験時間は60分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっています。合格に必要な得点率は65%。
大問1(2)(平面図形・等積移動)、大問3(3)(4)(平面図形)は1~2分やって方針が立たない場合は、いったん飛ばしたほうがいいでしょう。時間をかけすぎてしまわないように注意が必要です。また、大問2(3)(数の性質)もやっかいな問題なので、飛ばしてもかまいません。大問4(2)(3)(条件整理)はきわめて斬新かつ難しいので、解けなくても合否に影響はないでしょう。合否を分けた問題は大問3(平面図形)です。目新しい問題で、(1)(2)は簡単ですが、(3)(4)は面倒くさい問題です。丁寧に作図をしましょう。
<2008年度入試 合否を分けた問題 駒場東邦中学校 大問3>
下の図のように、正方形ABCDの中に、BCを1辺とする正三角形BCEがあります。DEをEの方に延長した線上にAD=AFとなる点Fをとり、AEをEの方に延長した線上にAD=DGとなる点Gをとります。
(1) 図を完成させなさい。
(2) 角AFDは何度ですか。
さらに、点Cと点F、点Bと点Gをそれぞれ結び、その交点をHとします。また、ABの長さを5cmとします。
(3) 三角形BEFの面積を求めなさい。
(4) 四角形EFHGの面積を求めなさい。