第17回 読解力がないから算数の文章題が解けないのか(2)

第16回に引き続き、算数特有の読み取りとはどのような読み取り方か、説明します。
問題は、以下の文章題でした。


【問題1】小学2年生
太郎くんのクラスの人数は33人です。背の低い順に並ぶと太郎くんは前から8番目になり、花子さんは太郎くんから数えて15番目にいます。花子さんはいちばん後ろにいる人から数えて何番目にいますか。


答えは、12番目です。正解になりましたか? また、お子さまはどのように考えて答えを出したのか、他の人にわかるように説明できましたか?

以下、問題文の国語的な意味は理解していることを前提にします。
まちがえる子どもは普通、次のように計算します。



まちがえる原因は、
(ア)問題文の数字「8」や「15」の算数的な意味合いを理解していない
(イ)計算して求めた数字の意味を吟味(ぎんみ)していない

のどちらかです。

(1)、最初に「何を求めるのか」を把握します。
[花子はいちばん後ろの人から数えて何番目か]

(2)、次に「8」の数字のもつ意味を把握します。
これは[前から数えたときの太郎の順番]です。
この「前から数えたときの太郎の順番」である「8」のもつ意味は、実は2つあります。
1つ目は文字通り、[太郎の順番がいちばん前の人から数えて8番目である]こと。
2つ目に [いちばん前の人から太郎まで、太郎を含めて8人の人がいる]ことです。

(3)、そして「15」の数字のもつ意味を把握します。これは[太郎から数えたときの花子の順番]です。 この文章題で最も差が出るポイントが、 [花子は太郎から数えて15番目]の部分です。つまり、太郎は前から 8 番目にいて、さらに太郎を1番目と置いて数えたとき、花子は15番目になるということです。
例えば、太郎から数えて2番目の人(太郎のすぐ後ろにいる人)を求めるときに 8 +2とすると、答えは10となって、いちばん前の人から数えると 10 番目になってしまいます。太郎のすぐ後ろにいる人なのだから 9 番目のはずなのに、計算すると 10 番目になってしまうのです。
この事実に気がつかない子どもは、15番目の意味を深くとらえないで、簡単に 8 +15=23としてしまいます。数の概念としては、15番目は「太郎から数えるのだから」 [太郎から(太郎を含めて)花子までの人数は15人]ととらえなければいけません。太郎の 8 番と1番が重なっているのです。このことを踏まえたうえで、[いちばん前の人から花子までに何人いるか]を考えて次の式を立てます。



花子は22番目の人となるわけです。この式に出てくる「14」という数字は、[太郎のすぐ後ろにいる人から花子までの人数が14人]ということです。
まちがえる原因で示した(ア)の子どもは、文章題の数字の「読解力」がないためにつまずいてしまうのです。

(4)、しかしここまで進めてきても、求めた数字の意味を吟味(ぎんみ)することができないと、33−22=11 答え 11番目 とまちがえてしまいます。ここに出てくる「22」の数字は、[いちばん前の人から数えて花子までの人数の合計]です。したがって「11」とは[花子のすぐ後ろの人からいちばん後ろの人までの人数]になります。
この11人をいちばん後ろの人から順に数えると11番目の人は、花子のすぐ後ろの人です。まちがえる原因で示した(イ)の子どもは、自分が計算して出した数字の「読解力」がないためにまちがえてしまうのです。

(5)、そしてここまで考えたら、あとは花子を1人加えて「11+1=12」と計算して12番目を出すか、または最後尾から花子までの人数を求めるために取り除く人数を求めます。まず「22−1=21」「1」は[花子自身]、「21」は[いちばん前の人から花子のすぐ前にいる人までの人数]を出し、次に「33−21=12」[最後尾から花子までの人数]を求めて、花子はいちばん後ろの人から数えて12番目とします。

このように、求めた数字の意味を【順番】としてとらえたり【人数】としてとらえたりしなければなりません。2年生としては結構複雑な思考をしたうえで、正解に至ることになります。算数文章題では、国語読解力に加えて「算数特有の精緻な読解力」が求められるのです。

どうですか? 上記を文章だけで考えていこうとすると頭が痛くなるでしょう。考える手がかりとして図を描いておきます。



プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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