【回答:森上教育研究所】受験対策<その1>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

苦手分野や志望校向けのフォローがない塾。転塾せずに、夏以降にできる対策は?

帰国生枠と一般枠ではどちらが有利?

記述式問題の対策はありませんか?

苦手分野や志望校向けのフォローがない塾。転塾せずに、夏以降にできる対策は?

個人経営の個別指導塾に通っています。
指導方法はテキストを各自で解き、わからない箇所を先生が解説するという形式です。今はテキストの基本問題を終え、練習問題に入ろうとしているところです。
今までは、ペースが遅いものの、しっかり身についていれば…と思っていたのですが、ここにきて国語以外、基本すら理解していないことがわかりました。本人に聞いてみると、何回聞いても先生の説明がわかりづらく、そのままやり過ごしてきてしまったようです。
面談で苦手分野の対策やフォローはしてもらえないのかと尋ねたところ、特にやらず、ひたすら今のテキストを進めるとの回答でした。志望校向けの指導やカリキュラムも特に考えていないようなので、数件の大手塾に夏だけでも通えないかと問い合わせしてみたところ、子どもの学力では個別でないと間に合わないとのことでした。しかも、大手塾の個別でも中学受験を指導できる先生が少なく、他塾の生徒まで手が回らないと断られてしまいました。いまさら、転塾も無理だと思います。家庭教師も経済的に無理です。
この夏以降、どういう対応をしたらいいでしょうか。
苦手分野の対策やフォローなしに、志望校に合格させることはできるのでしょうか?
受験生の指導を行う個別指導塾は、「単に、生徒の受験科目を教えればよい」というわけではなく、生徒の志望校に合格させるだけの学力をつけてあげることが仕事です。もちろん、第一志望校にすべての生徒が合格できるわけではありませんが、少なくとも志望校にチャレンジできるだけの学力をつけてあげられるように指導しなくてはなりません。
入試まで5か月をきる時期になって「国語以外、基本すら理解していない」という状況でも、現在通っている個別指導塾を続けていかざるを得ないとすれば、指導を受けている先生に、志望校に合格させるビジョンを聞いてみてはいかがでしょうか? 受験生を指導する個別指導の先生は、生徒を教えるだけでなく、生徒の現状を把握し、合格させるためには、いつまでにどれだけの学力をつけてあげればよいか、そのためにどのような学習をすべきかを、ビジョンにまとめることができなければなりません。
先生にビジョンがなかったり、ビジョンに納得できない場合は、通っている個別指導塾の中で先生を替えてもらってはいかがでしょうか。先生が合わなければ、替えてもらうことができるのが個別指導や家庭教師のメリットです。少なくとも、志望校に合格させるビジョンがつくれ、保護者に納得させることができる先生に指導してもらってください。

帰国生枠と一般枠ではどちらが有利?

5年生の息子は英語圏からの帰国子女ですが、日本語学校へ行っていたため、英語は簡単な日常会話しか話せません。私立中学を受験するつもりですが、帰国生枠と一般枠ではどちらが有利でしょうか? また、渋谷教育学園渋谷についても教えていただけませんか?
学校ランクによらず、帰国子女にとっては、一般枠で受験するよりも帰国子女枠で受験したほうが有利です。帰国子女枠で受験できるのであれば、その特権を使うべきでしょう。
難関校・上位校を除けば、帰国子女枠での入試は比較的簡単に合格できるといわれています。

入試科目は国・算または国・算・理・社のいずれかが多く、少数派ですが作文や面談を入試科目に加える学校もあります。英語の学力をご心配されているようですが、英語を入試科目に加える学校は少数派なのです。英語を使って受験する場合、どの程度の英語力が必要かといえば学校にもよりますが、英検2級程度あれば優位に立てるようです。

また、一般枠では国・算・理・社の4科目受験しかない学校でも、帰国子女枠では国・算の2科目で受験できる学校もあります。ちなみに渋谷教育学園渋谷の一般枠では入試科目が国・算・理・社の4科目ですが、帰国子女枠での入試科目は2科目+αの国・算・英または国・算・作を選択できます。英語に自信がなければ国・算・作を選択することもできます。

同程度の学校偏差値の学校を比較すると、共学校は男子校・女子校に比べ大学合格実績が劣る傾向があります。しかし、渋谷教育学園渋谷は例外です。大学合格実績に優れているためか人気が高い学校です。そのため、渋谷教育学園渋谷は、帰国子女枠で受験する場合でも、国・算の学力が高くないとなかなか合格を勝ちとることはできません。

記述式問題の対策はありませんか?

4年生の長男は作文が苦手で、数行書くのがやっとです。最近の入試では記述式の問題が増えてきているようですが、家庭でできる記述力のつけ方があれば教えていただきたいです。
記述式の問題が苦手な原因として論理的な思考ができないことが考えられます。お子さんは、暗記が得意で、論理的な思考をする習慣がないのではありませんか?
暗記が得意な子どもは、論理的な思考をしなくとも暗記できるので、論理力が発達しにくいようです。逆に、暗記が不得意な子どもは、簡単には暗記できないので論理や物事の流れをとらえて覚えようとするので、論理的な思考が自然に身につきます。
論理的な思考ができれば、あとは、解答するための表現力を身につければ記述力はついてきます。表現力といっても、記述の解答パターンを身につければ良いことで、作家並みの表現力は必要ありません。記述問題が得意な子どもであれば、なにがしかの書くパターン(流れと要素)をもっているのが普通です。小論文は、起承転結や首胴尾のパターンがあります。作文は小論文と違い、結論がなくても良いといわれていますので、時系列のパターンで書けば書きやすいはずです。
記述式の問題も、設問形式によって解答方法には、いくつかのパターンがあります。書くことが苦手であれば、最初は1つだけ記述のパターンを覚え、徐々に設問形式にふさわしいパターンを増やしていけばよいでしょう。同じパターンで何度も書いているうちに、記述問題が苦手ではなくなっていくはずです。

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中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。私塾に『中学受験研究』、私学に『私学中等教育』を月刊で発行している。「わが子が伸びる親の『技(スキル)』研究会」を主催している。

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