第20回 算数文章題の読み取り方と適性検査(2)

【問題2】小学5年生
18m² の花だんAと、15m² の花だんBがあります。花だんAには2.7kg、花だんBには1.8kgの肥料をまきました。花だんAと花だんBの肥料のまく割合を同じにするには、どちらの花だんに何kgの肥料をまけばよいですか。


今回は、「わからない部分」をどのように明らかにしていくのかを説明しましょう。
分析の流れをもう一度振り返ってみます。

(1) 最初に問題文を読んで「わかるところは何か」「わからないところは何か」を把握します。書かれている「事実」を正しく読み取るのです。


  1. まず、問題文がいくつ書いてあるのか確認します。
  2. 次に「何を答えればよいか」を問題文から読み取ります。
  3. 指示語が含まれていれば、指している内容を明らかにします。
  4. 「答えること」は何か、指示語の内容を説明し、言い換えなどをしてわかりやすく表現してみます。
  5. そして「わかっている事実」と「問題文に書いてある数字の意味」を明らかにします。単位のついている数字は「~の広さ」「~の重さ」という言い方でつかむようにします。
  6. このようにして「わかる部分」を把握していく中で「わからない部分」を浮かび上がらせていくのです。この問題を解答するために自分にとって課題となるところは何かを探っていきます。この流れは、中学数学「平面図形の証明」の『結論と仮定』をとらえるプロセスと似ています。

(2) 次に「わからない部分」の分析を行います。
それまで培ってきた知識、理解、技能、体験を統合して、課題解決の作業に入るのです。

さて、太郎がわからない部分は「花だんAと花だんBの肥料のまく割合を同じにするには」でした。特に「肥料のまく割合を同じにする」という表現が理解できないのです。「単位量あたりの大きさ」の問題なのに「割合」という言葉が登場してきます。ここで「わけがわからない」と感じてしまうのです。
この問題を「なんとなく解けてしまう、勘の働く子」というのは、「肥料のまく割合を同じにする」の内容を吟味しなくても、また、その表現の意味がわからなくても解いてしまうのです。
「花だんに肥料をまくのだから まず、1m² にどれくらいの量をまくか出してみよう」と考えて動き出します。


Aは2.7÷18=0.15、
Bは1.8÷15=0.12


「Aは1m² あたり0.15kg使い、Bは1m² あたり0.12kg使うのだから、Bの花だんに多くまけば、同じ量をまくことになるな」


0.15−0.12=0.03


「Bのほうに1m² あたり0.03kg多くまこう」
「Bは15m² ある。だから全部で、0.03×15=0.45、よし、Bのほうに0.45kgだ」

解きながら考え、わかる範囲で数式を立てて答えを出し、出した数字の意味をとらえ直しながら解き進めることで解答に到達することができるのです。
「問題文の言っていることがわからない」と立ち止まった子どもと、なんとなく解けてしまった子どもと、それほどの学力差はないといえるのに、点数の差は100点となり、大きな差になって出てくるのです。

両者のどこに違いがあるのかというと、≪行動しながら考える、しかも計算した結果(数字)の意味を考えて、次の行動に移る≫ことができるか、どうかです。なんとなく解けてしまった子どもも決して論理的考察を踏まえたうえで問題を解き始めたわけではありませんが、解くプロセスの中で論理的に考えているのです。

次回は、過去の学習体験を振り返り、論理的分析的な考察をしながら解く過程をご紹介しましょう。問題2と類似の基本問題を2題ご紹介しておきます。


【問題3】
自動車Aは35リットルのガソリンで420km、自動車Bは40リットルのガソリンで540km走ることができます。ガソリンの使用量のわりに長く走るのは、どちらの自動車ですか。


【問題4】
350m² の畑から560kgのキャベツがとれました。これと同じ割合でキャベツがとれるとすると、キャベツを2000kgとるには、何m² の畑が必要ですか。


プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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