受験生への接し方 その3[中学受験]

女の子に多い、精神年齢は高く、自我に目覚めている部分があるので親の管理を嫌う、素直ではないので対処が難しいタイプの受験生を持つ親御さんからの相談を見てみよう。

「最近、娘は、不安や焦りが原因なのかイライラし、精神的に不安定になっています。家庭はくつろげる場所であるべきと思ってはいますが、やらなくてはならないことが山積みで、『~やったの?』と言わなければならないことも多く、険悪な日が続いています。どのように接したらよいのでしょうか?」
受験生がイライラしているということは、自覚があるという証拠だが、親子でイライラしていては声がけもうまくできない。声がけというよりも、親は子どもの問題点のみを指摘し、なすべきことを命令するだけになっていないか? 確かに、このタイプの受験生には「がんばれ」という声がけや「ほめる」ことも通用しにくい。親に反抗的であれば、声がけしても逆効果で、むしろ、親は、声に出さず、子どもを気遣ってあげるほうが効果的だ。

「第1志望に入りたいという強い気持ちがありながらも、だんだんと疲れが出てきたのか、反抗期だということもあり、親のアドバイスには耳をかさずに、勉強の効率が以前よりも落ちてきているように思います。子どもを『がむしゃらに』ではなく『効率的にがんばる』よう変える秘伝を伝授していただきたいと思います。」
がんばっても、成績が上がらなければ、誰でも疲れてくる。そんな時、親の声がけが叱咤(しった)激励だったならば、子どもの反応はどうであろうか? 子どもを余計イライラさせ、勉強意欲をそぐことにもなりかねない。子どもは、親に言われる前に、勉強の効率が以前よりも落ちていることを一人で悩んでいるかもしれない。その原因を究明し、解決しなければならないのだが、親のことを単に口うるさいだけの存在としか考えていないとしたら、子どもは親に相談しない。下手に相談などしようものなら、「お前が悪い」と説教されるのが関の山となる。子どもは「親は子どもの味方で、協力者だ」と思っていないのではないか?

子どもが親のアドバイスに耳をかさない場合、そのアドバイスは、子どもには不必要なのかもしれない。子どもが必要としているアドバイスが、受験指導など親にはできない分野であれば、プロに頼めばよい。自覚がある子どもには、声がけよりも本人が抱え込んでいる問題を一緒に解決してあげることが先決だ。問題解決をするためには何をすればよいかがわかった時点で、子どもは希望を持つことができる。その時点で、激励する声がけならば子どもも受け入れるだろう。また、やる気の秘伝があるとすれば、時期的なことも考えると、過去問演習で得点力と自信を付けさせることだ。このまま勉強すれば志望校に合格できるという希望を与え、やる気にさせることができる。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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