【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その9>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。


【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その9>

通学の便と校風、どちらを優先したらいいでしょうか?

学校見学で、最低限見ておくべきことは?

併願校を決める方法がわかりません

通学の便と校風、どちらを優先したらいいでしょうか?

家からの距離や交通の便を優先するべきか、遠くても子どもに合った学校のほうがいいのか悩んでいます。
【森上教育研究所】
近い学校か、遠くとも「わが子に合った学校」か、多くの受験生・保護者が悩んでしまう志望校選定事項です。ちなみに、私立中高一貫の難関校に在籍している在籍生・保護者アンケートで中学受験時点の第一志望校選定の3大事項を挙げてもらったところ、保護者が選んだ割合の高い1位が「教育方針・校風とわが子の相性」=「わが子に合った学校」で、2位が「通学時間」となりました。この相談では重視事項の1位と2位で悩んでいることになるわけです。
私立の中学生の通学時間を調査してみると90分を超える生徒は少なく、生徒が耐えられる限度通学時間は90分と言われています。通学時間が90分未満(できれば生徒が集中する通学時間45分〜60分が理想)ならば「わが子に合った学校」を志望校として優先しても良いのではないでしょうか?
わが子を「わが子に合った学校」に入学させたい保護者は多いのですが、「わが子に合った学校」を見つけられない保護者も多いのです。相談内容から、「わが子に合った学校」を見つけられたわけですから、同じ要領で「わが子に合った学校」を見つけられるのではないでしょうか? 今の「わが子に合った学校」の通学時間が90分を超えるようであれば、45分〜60分で、「わが子に合った学校」を探してはいかがでしょうか。

【日高のり子さん】
うちの場合通学時間は60分弱ですが、朝練のある部活ですので、大会などが迫ってくるとへとへとになってしまいます。
でも同級生には、1時間半〜2時間かけて通っている子もいるようです。
部の活動が少なく、授業の終了とともに下校でき、睡眠時間を補えるようであれば、多少時間がかかっても通えるかもしれませんが、週6日部活があり、朝練もとなると体力がもたないかもしれません。
もし、入学してから入りたい部が決まっているのであれば、活動日を調べて考えるという手もあります。
子どもの体力、お弁当を作る母の体力、家族の生活が入学によってどう変わるかなども考慮し、いちばん合っている学校にするか、2番目に合っていると思われる学校にするか決めてはいかがでしょうか?

学校見学で、最低限見ておくべきことは?

実際に学校見学に行きたいのですが、志望校が絞りきれません。少しでも学校見学には行ったほうがいいのでしょうか? また学校見学のときに、最低限ここだけは見ておかなければならないということを教えてください。
【森上教育研究所】
学校見学は、志望校を決定するために行うので、「実際に学校見学に行きたいのですが、志望校が絞りきれません」は逆の思考順序です。志望校候補を決めて、ぜひとも学校見学に行ってください。学校見学に行かなければ、志望校はいつまでたっても決まりません。
まず、偏差値と通学時間で志望校の候補となる学校を選択しましょう。偏差値で候補となる志望校を選択します。お子さんが6年生であれば、より現実的に、80%合格偏差値でお子さんの偏差値よりも5〜7偏差値が高い学校を選択します。4、5年生であれば、目標校として、80%合格偏差値でお子さんの偏差値よりも10程度偏差値が高い学校でもかまいません。選択した学校の中で、通学時間が60分以内の学校に絞ります。もちろん、入学したい学校であれば90分程度の通学時間は普通ですが、今回は、学校見学に行く学校を絞り込むために通学時間を60分と限度したわけです。
学校見学に行く前に、「わが子に合う学校」かどうかという観点でその学校の学校案内を読んでください。具体的には、学校の教育方針や校風が合うかどうか、入学後をイメージできるかどうかを見極めます。学校案内だけではわからないので、学校見学に行くことになるわけです。学校見学で見ておきたいポイントはたくさんありますが、在校生・先生にやる気と活力が感じられるか、わが子と自分自身の感覚に合っているか、が最も重要です。

【日高のり子さん】
学校見学は、おうち選びと似ています。
ここは殺風景で、毎日過ごすと息が詰まるかも…とか、廊下が広くて窓も大きいし、明るい校舎だな…とか、古いけれど掃除が行き届いていて清潔だわ…とか、ロッカーがへこんでる! 乱暴な子が多いのかしら…など、実際に足を運んでみると、いろいろなことが心に浮かんでくるはずです。
そして、そこに通う生徒たちはわが子の先輩になる人たち、先生は師となるかたですから、その印象もとても大切です。
教室の雰囲気、先生と生徒の会話から見てとれる関係の良しあし、駅から学校までの通学路の確認など、学校見学は、とても大切で収穫も多いと私は思います。

併願校を決める方法がわかりません

第一志望は漠然と決まっていますが、それ以外の学校については全く考えがありません。いろいろな学校がありすぎてわからない場合、どのように併願校を決めていけばいいのでしょうか。
【森上教育研究所】
アンケートで第一志望校・併願校選定の3大事項を挙げてもらったところ、保護者が最も重視した事項は、第一志望校の選定でも併願校の選定でも「教育方針・校風とわが子の相性」でした。しかも、3大事項のうち、第一志望校では77%の保護者が、併願校でも61%の保護者が「教育方針・校風とわが子の相性」を選んでいます。つまり、保護者は志望校を偏差値よりも「わが子に合った学校」で選ぶ、という、現代の中学受験の風潮を裏づけています。
併願校では、2番目に割合が高い事項が「合格可能性」だったことから、併願校には、万が一、第一志望が不合格になった場合のおさえという役割があることがわかります。しかし、最重視事項は第一志望校でも併願校でも「教育方針・校風とわが子の相性」です。第一志望校と併願校で%の差が大きい事項は、「大学合格実績」で、第一志望校では3番目で40%の保護者に重視されていますが、併願校ではわずか8%の保護者しか重視していません。併願校は「合格可能性」を、第一志望校は「大学合格実績」を重視する特徴はありますが、その他の事項の割合はほぼ同じくらいです。
つまり、併願校は、第一志望校の偏差値よりもあまり下げないで合格可能性が高い学校を選定する結果、偏差値と連動する大学合格実績を重視できなくなります。その他は第一志望校と同じ基準で選べばよいでしょう。

【日高のり子さん】
家庭と協力して、共に子どもを育ててくれる学校というのが私の希望でした。
勉強だけでなく、しつけ(服装、礼儀)の面も含め、厳しさと愛情をもって子どもを見てくれて、何かあったときには相談に行きやすい、心が通じ合える学校です。子どもからの要望としては、明るく、活気のある、自由な雰囲気の学校というのがありました。
双方のポイントをおさえつつ、通学時間を考え、偏差値を少しずつ変えて選んでいくと、徐々に絞り込んでいけると思います。もちろん最終決定は、子どもを連れて学園祭などに行き、本人の感想を聞いて決めました。

プロフィール



【日高のり子】『タッチ』(浅倉南役)、『となりのトトロ』(草壁サツキ役)でも大活躍の声優。ブログ「日高のり子の中学受験ホンネで語る成功と失敗」が人気。
【森上教育研究所】中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。

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