細かい所にとらわれて、全体が見とおせない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小5男子のお母様

質問
読解の問題で、難しい文章の読み取りが苦手です。選択問題で迷い始めると、いつまでも選べず、時間ばかりが過ぎてしまいます。文章を読んで、そこから、自分なりのイメージを広げていくことも、あまりうまくいきません。細かい所にとらわれて、全体が見とおせないようです。読書は、科学系のものがほとんどです。

小泉先生のアドバイス
全体を見とおすための「方法」とその「意義」について指導する

「細かい所に注意し過ぎると、全体が見とおせなくなる」が、「全体をつかもうとすると、細部がおろそかになる」といった具合で、バランス良く問題文を読み、かつ問いに答えることはなかなか難しいようです。しかも制限時間という枠がありますから、状況はさらに厳しくなります。しかし、より良い答案を仕上げるためには、「全体」と「詳細」はどちらも大切です。両方にバランス良く注意を払うことで、時間内にベストな答案を仕上げることが可能になるのです。そこで今回は、お子さまの苦手な国語における「全体」のとらえ方と、その意義についてお話しします。

お子さまは「細かい所にとらわれて、全体が見とおせない」ということでお悩みのようですから、全体を見とおすための「方法」とその「意義」について指導すると良いでしょう。まず「方法」ですが、問題文を読んだあと、筆者のイイタイコトを「ひと言」でまとめる練習をするのが一つです。
たとえば物語文の場合は「主人公が『人には得意・不得意がある』ことを理解し、自分のコンプレックスを克服する物語」という具合に、あるいは論説文の場合は「日本人は古くから自然と共存することで、豊かな自然を守ってきたという話」といった具合です。このように文末を「○○の物語」とか「○○の話」などにし、「コンプレックスを克服する」とか「自然と共存・自然を守ってきた」などのキーワードを入れることで、問題文のイイタイコトを浮き彫りにします。
ここで大切なことは、物語文で言えば「あらすじ」をダラダラと述べることではないということです。この点に注意して、筆者のイイタイコトをまとめられるようにすると良いでしょう。最初は難しいかもしれませんが、練習することで少しずつ上手になると思います。

「ひと言」でまとめられるようになっても、その「意義」を意識しなければ、あまり効果的ではありません。
たとえば物語文の場合、「全体をとらえる」ことは、各場面における登場人物の気持ちをより的確に理解することに役立ちます。前の例で挙げた「コンプレックスを克服する物語」なら、最初は主人公の気持ちや人間関係はあまり良くなかったが(つまり「-(マイナス)」に近い)、だんだん良くなり、最後は大きく「+」になった「成長の物語」と全体の流れをとらえられます。図に表すと、以下のような物語になります。

【図1】物語文をとらえて図に表わすと…
図1

さて、そんな問題文の最後のほうに、ある登場人物が他の登場人物のやっていることを見ながら、「何をしてるんだか、と思って」という記述があったとします。そして、「この言葉にこめられている思いはどんなものでしょうか」という設問です。ここでは選択肢が与えられていて、「ほほえましい」のかあるいは「ひどくあきれている」のかの最後の2択で迷ったとしましょう。
この問いで大切なことは、「何をしてるんだか」という≪言葉≫だけで考えてはいけないということです。言葉だけ考えると、「あきれている」というイメージが強くなります。しかし、その場面における気持ちや人間関係は高いレベルで「+」になっているわけですから(図1参照)、当然、その時点でのこの発言も「+」であると考えるのが普通です。すなわち、「ほほえましい」が正解になります。

実際にこのような問題をやってみると、言葉のイメージだけで「ひどくあきれている」を選択してしまう生徒は少なくありません。しかし、「全体」から「詳細」を考えることで、今回のように「ほほえましい」を選択することができるようになります。そしてこれこそが、「全体」をとらえることの「意義」の一つと言って良いでしょう。

今回は「全体をとらえる」ための方法論やその意義について述べました。これらのことをお子さまに伝え、全体を見とおす大切さを理解させ、少しずつ実践していくと良いと思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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