ダイエットの落とし穴……「思春期やせ症」 基礎知識編

「やせてきれいになりたい」という願望から、多くの思春期の子どもたちがダイエットを始めています。しかし、その中には別の原因から食事を摂らなくなり、やせていくケースもあるようです。
今回は、このような摂食障害の治療と病態の研究を通し、多くの患者を診てこられた政策研究大学院大学保健管理センター教授の鈴木眞理先生に、「思春期やせ症」とはどのような病か、またその対処法について伺いました。



ダイエットの落とし穴……「思春期やせ症」 基礎知識編


思春期やせ症は心の病が原因

健康な人が過激なダイエットをして標準体重の85%を切るまでやせると、必ず脳が反応して生体防御反応としての食べたいという欲求が出てきます。そして、リバウンドという結果に終わります。ダイエットは失敗かもしれませんが、健康のためには成功です。でも、本人の心の問題を心で解決できず、食べないという誤った摂食行動で解消しようとして極端に体がやせてしまい(標準体重の80%以下)、やがてさまざまな障害を引き起こす場合があります。このような、心の問題によってやせていく症状を「やせ症」と呼んでいます。

中でも、思春期の子どもたちに発症するケースは「思春期やせ症」と呼ばれています。これは心の病の一つで、勉強や部活の中で味わった挫折、進路の迷いや人間関係など、本人が抱えている大きなストレスや挫折感からの逃避が原因で発症します。この病の症例は、圧倒的に女子に多く、小学高学年から見られるようになり、中学生で急増。年々増加していて、最近の有病率は過去最高です。

体がやせると、体重計の数値が減るのを見たり、他人から「やせたね」と言われたりすることで達成感を覚えます。また、栄養不足になると、苦痛を和らげようと脳から麻薬のような物質が分泌され、それによって嫌なことにも取り組むことができるようになります。飢餓に伴う一時的な気分の高揚です。そのため、自分の行動は悪いことではないと勘違いし、「思春期やせ症」が発症していても、本人も周りも間違ったダイエットをしていることに気付けず、症状を悪化させていくのです。



「思春期やせ症」になりやすい子どもの特徴と障害例

「思春期やせ症」になりやすい子どもには、主にまじめだけれど柔軟性に欠け、物事をストレスとして感じやすい、完璧主義のあまり挫折を経験しやすいなど、多くの類似点が見られます。


「思春期やせ症」になりやすい子どもの主な特徴
・手のかからない良い子
・困っても他人を頼らず、自分でなんとかしようとする
・他人の評価に敏感
・自分を「よくやっている」と認められない
・負けず嫌い
・完璧主義

このような、心の病が引き起こす「思春期やせ症」は、低栄養による低血糖や、内臓障害、不整脈、感染症などの重症の合併症、また強迫性障害やうつ病などの精神科的疾患など、多くの危険な障害を招く恐れがあります。さらに、放っておくと以下のような後遺症を引き起こすことにつながります。

◎低身長
成長に関わるホルモンの異常をきたし、身長の増加が鈍る。発見が遅れると、場合によっては将来低身長になる可能性もある。
◎初潮の遅れや無月経
体重減少にともない、子宮・卵巣の発育が滞り、初潮の遅れや、初経後の女子の場合は月経周期の乱れや無月経、将来不妊症などのリスクが高まる恐れもある。
◎骨粗鬆(しょう)症
思春期は、骨量増加が盛んになる時期。この時期に、摂食量の減少と体重を急激に変化させることは、骨の成長を大きく妨げ、早くに骨粗鬆症になって、骨折などの骨のトラブルを招くことになる。
このような障害から子どもを守るためには、病の早期発見と早期治療が大切です。

次回は、「思春期やせ症」の見分け方と、その対処法について紹介します。


プロフィール

鈴木眞理

鈴木眞理

長崎大学医学部卒業。米国ソーク研究所神経内分泌部門に留学後、東京女子医科大学准講師を経て、2002(平成14)年より現職。中枢性摂食異常症の病態生理と治療などを研究。主な著書に、『摂食障害』(日本医事新報社)などがある。

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