第10回 全国学力・学習状況調査に見る「論理的思考力」
平成19年(2007年)から文部科学省の全国学力・学習状況調査(以下,全国学力調査)が小学6年生と中学3年生に実施されています。この調査では、「教科に関する調査」として、国語及び算数/数学について、主として「知識」に関する問題Aと、主として「活用」に関する問題Bを出題しています。また「質問紙調査」では、児童・生徒の学習意欲や学習環境等に関する調査を実施しています。「質問紙調査」にも興味深い事柄がありますが、ここでは、「教科に関する調査」の主として「活用」に関する問題と、第9回コラムで示した「論理的思考力」のかかわりについて説明します。
全国学力調査の問題Aは、教科書内容の基礎的・基本的な知識・技能の定着度を測り、問題Bは、基礎的・基本的な知識・技能を活用する力を測る問題構成になっています。問題Bの「活用する力」では、これまで学習してきた知識・技能等を実生活のさまざまな場面に活用し、課題解決を図る力を見ようとするものです。問題Bを通して児童・生徒の思考力・判断力・表現力等を調査するものでした。
文部科学省が掲げる〔調査問題の趣旨・内容〕から具体的に示してみましょう。
算数Aの(例)では「整数、小数の四則計算をする」「示された重さや面積のものを選ぶ」「基本的な図形の性質に基づいて図形を弁別する」「基準量と割合から比較量を求める」となっています。
算数Bの(例)や(課題)では「情報を整理・選択して筋道を立てて考え、示された判断が正しい理由を式と言葉を用いて記述する」「図形の性質を基に面積の関係をとらえ、その判断の理由を説明する」「割合の考えを用いて他者の考え方を評価し、その理由を説明する」「示されたグラフの対応を判断し、グラフから読み取れる違いを説明する」となっています。
問題Aと問題Bの違いは明らかではないでしょうか。
「活用する力」として、
「情報を整理・選択し」
「P(図形)の性質を基にQ(面積)の関係をとらえ」
「ある1つの考え方について、それとは別の考えを用いて評価し」
「筋道を立てて考え」
「対応を判断し、違いを説明」して
「示された判断が正しい理由を記述する」力を測っています。
この「活用する力」(思考力・判断力・表現力)を、、第9回コラムでご紹介した小学生における「論理的思考力」にあてはめて言えば、「同じものや違いに着目して物事を区別し、あれとこれの関係やつながりがわかるように考えて判断」する力が【思考力・判断力】であり、「判断した根拠を明らかにしたうえで、相手にわかりやすく説明する力」が【表現力】となります。