文章をじっくりと読むことができません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小6男子のお母様

質問
文章をじっくりと読むことができません。流し読みをしてすぐに答えるため、間違いが多いようです。ゆっくり読む、繰り返し読む、ということを言って聞かせていますが、なかなか習慣化しません。

小泉先生のアドバイス
「音読」「心の中で声を出す黙読」、「大切な箇所に線を引く」というステップを踏む

国語の問題を解く時は、2種類の読み方が必要だと思います。一つは、問題文全体を読んで書いてある内容を理解する読み方。仮に、「通読」と呼びましょう。もう一つは、問いに答えるために傍線部を中心に読む時の読み方。仮に、「精読」と呼びましょう。お子さまの場合、「通読」が上手くできていないのか、あるいは「精読」が雑なのか、あるいは両方である可能性もあります。

まず「通読」で流し読みしないようにするには、「音読」が一番良いでしょう。「音読」をすると、飛ばし読みをすればすぐにわかってしまいます。また声に出して読むことで、一定以上速く読むことはできなくなります。そのため自然にしっかり読むようになり、じっくり読むという感覚が自分でも良くわかると思います。
音読の練習を一定期間行って、じっくり読めるようになったら、次は「黙読」に移ります。声は出さずに読むのですが、頭の中では声を出します。さらに、大切だと思われる箇所に鉛筆で線を引きながら読んでいってください。音読よりは読むスピードは速くなりますが、線を引きながら読むと、流し読みを防止することになります。
ただし最近の入試問題ではかなりの長文も出題されますから、読む速さもある程度は必要です。問題文を理解できて、しかもある程度のスピードで読むというバランスが大切です。

次は、「精読」です。「精読」は、「通読」よりも遅いスピードで、傍線部とその前後をじっくりと読みます。その時も、大切な箇所に鉛筆で線を引きながら読むようにしてください。また「問い」を読む時も、大切な箇所に線を引くと良いでしょう。「問い」における大切な箇所とはすなわち、「何が問われているか」と「条件は何か」です。これを読み違える子どもが非常に多いので、お子さまの場合も案外ここで間違えている可能性があります。
そして、問われているものを本文から探していくという作業になります。説明文や論説文の場合は、問題文のどこかをそのまま「活用する」(本文中の言葉をそのまま、あるいは言い換えて使用する)場合が多いでしょう。また物語文の場合は、やはりどこかをそのまま「活用する」か、あるいは心情表現から登場人物の気持ちを読み取る場合が多いと思います。いずれにしても、本文の内容を適切に読んでいれば、どこに何が書いてあったかわかるはずですから、正しい答えを得られると思います。

ところが、依然として間違えてしまう場合はどうするか。そんな時は、以上の作業のなかでどこが原因かを調べることが大切です。たとえば、自分の答案を読み直して「なんだ、問いに答えていないじゃないか」と思えたら、それは問いをしっかり読んでいない証拠になります。あるいは気持ちがずれている場合は、とらえるべき心情表現の場所がずれているか、または心情表現から適切な気持ちを取り出していないかのいずれかでしょう。さらには、説明文や論説文で書くべき箇所がずれているかもしれません。
おそらく「通読」における読みが甘く、本来書くべきところを読み落としたのでしょう。あるいは「精読」に失敗し、だいたいの場所は合っているのに、書くべき部分が微妙にはずれている可能性もあります。または問いにある「一文」や「抜き出せ」などの条件を読み飛ばしているかもしれません。

このように、間違いといっても原因はさまざまですから、それをお子さまに考えさせることが必要です。なぜなら、原因が一番わかるのはお子さまだからです。そして「読み」に原因があるならば、その原因を取り除くべく、「通読」や「精読」あるいは「問いの精読」をさらに練習すれば良いでしょう。その場合も必要に応じて、「音読」「心の中で声を出す黙読」「大切な箇所に線を引く」というステップを踏みながら、確実にしかも速く読むという適切なバランスを探っていきましょう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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