模擬試験のポイント 6年生の模試シリーズ その1 [中学受験]

4月末から5月にかけて、「志望校はどの学校にすべきか?」という質問が多い。しかも6年生の子どもを持つ保護者からの質問の場合も少なくない。おそらくこの時期は、合否判定の模試の結果が返却されるからであろう。つまり、以前から志望校と考えていた学校の偏差値と子どもの偏差値の差が思った以上に大きく、「志望校を再考すべきではないか?」と考えるかたが多くなるということである。
ご存じのように偏差値は相対的なものであり、他の受験生と比べてどのくらい良いのか(または悪いのか)を示す基準である。従って他の生徒と同じように勉強していれば、理論的には偏差値は最後まで変わらないはずである。しかし実際には偏差値が急激に上昇する生徒もいれば、逆に下降する生徒もいる。また他の生徒よりも明らかに努力していても、一向に成績が好転しない場合もある。かくして入試直前まで、模擬試験における偏差値の上下に一喜一憂することになるのである。ということで、このシリーズでは6年生の模擬試験に関するいくつかのポイントについて考えていきたい。

まず6年生の模擬試験には、その「質」が変化する時期が何回かあることを知っておきたい。一つの節目は、ちょうど今の時期であろう。問題が急に難しくなったと感じられ、偏差値がガクッと下がる生徒が出てくる今の時期は、模擬試験の「問題の質」が変わる時と考えられる。急に難しくなったと感じる原因は、問題がより論理的・抽象的になるからである。実際の入試に一歩近づいたということなのだが、この問題の変化をすんなりと受け止める生徒もいれば、受け止められずに偏差値を下げてしまう生徒もいる。
変化を受け止められない生徒に多く見られる共通点としては、今まで「あまり考えずに学習してきた」という点が挙げられる。
たとえば国語で選択肢問題を解く時、「これが正解かな?」という具合に感覚的に選んでいる生徒である。中学受験の国語は理論的に考えることが必要であるため、感覚的に解いていると成績が上位で安定しないばかりか、どんどん下降する恐れがある。5年生までに受けてきた試験は問題自体がそれほど難しくないため、理論でなく感覚で解ける問題が多い。しかしこれからは、「理論的に考える」ことが要求される。
これはもちろん、算数でも同じである。先生の示した解き方をそのままマル暗記して済ませている生徒は、応用力が必要なこれからの問題を解く時にかなり苦戦する。解法を覚えることはもちろん必要だが、それだけではなく「なぜだろう?」と考えることが必要なのである。

考えながら勉強するということは当たり前のようだが、しっかりとできていない生徒が多い。特に上位の中学校を目指す場合は、この「考える学習」が要求されるので、低学年からクセをつけておく必要がある。あまり考えずに学習してきたため、この時期の模試で成績を下げている生徒は、自分の学習法を再チェックする必要があるだろう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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