中学受験は情報戦……?[中学受験]

森上教育研究所で学習個別相談会を月に1回実施しているが、先日なかなか興味深い相談を受けた。それは「『中学受験は情報戦』などと情報誌に書いてあるが、『何の情報が必要なのか』『どうやって情報を得るのか』を知りたい……」というものであった。実際にお会いして質問の主旨をお聞きすると、「(ご自身は忙しく働いているため)なかなか説明会などの情報収集が難しい。ところが最近の情報誌を読むと、情報収集が受験生の有利不利を決めかねないとあり非常に不安である」とのことであった。非常に根本的で、賢明な質問であると思った。なぜなら情報は大切だが、それに振り回されないためにも「受験情報」について一度は考える必要があるからだ。

情報を有効に使うためには、「自分にとって有効な情報とは何か?」を整理しておくと良い。そうしないとさまざまな情報に理由もなく一喜一憂し、使ったエネルギーの割には得たものが少ないということになる。また有効な情報を得たとしても、その情報の本当の価値を見過ごしてしまう可能性もある。
まず「何の情報が必要なのか?」を考える場合、「何がやりたくて情報を得るのか?」に注目すべきであろう。たとえばA君という子どもがB中学校を熱烈に志望し、そしてB中学校の入試に合格できる実力が十分にあるとする。そんな場合は既に十分な情報を得ているということであり、試験の日時など基本的なことは別として、他にA君が求めるべき情報はあまりないと言える。つまり新たな情報が必要な時とは、決断に迷うことで何らかの判断材料が必要な場合、あるいは合格のための力や条件が足りない(または足りなくなった)場合などである。

受験に関する情報を大きく分けると、「目標設定」「モチベーション」「目標達成のための手段」の三つに分類されると考える。
「目標設定」とは、「自分に合った学校選び」などのことである。たとえばA君がB中学校を志望している間は良いのだが、もしも「B中学校以外に適切な中学があるのではないか?」と迷い始めたら、他の国公私立の中学校に関する情報はA君にとって非常に重要なものになってくる。あるいは来年のB中学校の難度が急激に上昇するというように、得ていた情報が変化した場合も新しい情報が必要になってくるであろう。
「モチベーション」とは、中学受験に対する「動機付け」のことである。たとえば保護者がB中学校を希望しても、本人のA君はそうでもない場合がある。あるいはA君は、中学受験自体にまだ熱意を感じていないかもしれない。こんな場合でも子どもは「受験はしたい」と言うことが多いので、保護者は困ってしまうのである。こんな時は、「本人にヤル気を持たせる」ための情報が必要となる。「動機付け」のための情報や方法論は多くあるが、お子さまに当てはまるかどうかが問題であろう。もしかしたら「我が子に意欲を持たせる」ための情報の収集には、かなり苦労されるかもしれない。
志望校が決まり、子どものヤル気も出てくれば、あと必要なのは「目標達成のための手段」に関する情報である。たとえば「どういったスタイルで受験勉強をするか」とか、「どの塾に通うか(あるいは通わないか)」といったことを決めるための情報だ。また学習が進むにつれて何らかの問題が出てくる場合も多いが、それらを解決するための情報も「手段」の情報と言える。たとえば「算数の立体図形が苦手だがどうしたら良いか?」などを解決するための情報である。

今後受験情報を得た場合はこれら三つの情報のどれなのかを考え、お子さまにどの程度必要なのか、あるいは有用なのかを判断し、得た情報を有効に活用したいものである。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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