「教えすぎ」はダメ[中学受験]

先週に引き続き、私の父が兄に中学受験の勉強を教えたという話をする。
先週もお話したように、世の中の父親が、今に比べてもっともっと怖かった時代である。教わるほうもずいぶんと緊張したのではないかと思う。当時のことを兄に聞くと、とにかくよく怒られたそうである。それもできなくて怒られるのならわかるが、説明がわからないと怒るそうなのだからたまったものではない。説明がへただったのだろうと想像するが、それは事前の勉強不足が理由ではなかったと思う。なにしろ「完全学習」という参考書を自分の分まで買い込み、なんと会社にまで持っていって勉強したようなのである。

わかりやすい説明ができなかった原因の一つは、おそらく生徒が「理解しているか・理解していないか」に注意を払わなかったことにあると思う。この「生徒の様子をあまり見ない」というのは、何も私の父だけの失敗ではなく、先生が一度はやってしまうミスだ。それは説明というより、「独演会」に近くなってしまっているのである。

ヘタな解説を始めると二つのことが起こる。それは解説を始めた先生は自分の解説に酔いしれること、聞いている生徒は「考える回路」を徐々に閉じてしまうことだ。これは完全に「教えすぎ」である。逆にここまで教えなければ、生徒は自分で考え始める場合が多い。つまり「教えすぎない」のが、最高の指導なのである。もちろん問題の内容がまったくわからなければ、根気のある生徒でもあきらめてしまう。
今の生徒の言葉で言うならば「無理!」とか「意味不明」というところか。教えすぎてもダメ、教えなくてもダメということで、教材にもよるが、そのギリギリのところを教えるのが生徒にとって最高の先生と言える。もちろん個別指導でなくてはこのような指導は難しいかもしれないが、親子でやる勉強はこんな贅沢(ぜいたく)も許されるのである。

さて「教えない指導」「解説は少ない方が良い」と言ってきたが、これは先生が生徒の理解度を把握していることが前提である。把握する方法はいくつかあるが、簡単なのは生徒の顔を注意して見ていることだ。生徒の表情を見ながら教えていると、わかったのかわかっていないのか、だいたい見当が付くようになる。
たとえば何かをわかった時の様子は、表情がパッと明るくなる。一生懸命理解しようと神経を集中し、その中で何かをつかめた時の表情は、安堵(あんど)と喜びが顔いっぱいに広がる。保護者の皆さまがお子さまを教えている時も、注意して様子を見ていればこの変化がわかるだろう。ぜひこの表情を見逃さないでほしい。「わかった」というサインであるとともに、この表情を見ることが教える側の一つの醍醐味(だいごみ)でもあるのだ。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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