私立中学志望動向を考える その3[中学受験]

前回前々回と、私立中学志望動向について考えてきた。
今回は、「自主性重視で精神面重視」「(生徒)管理型で学習面重視」といった言葉について、保護者側と学校側にどのようなイメージの違いがあるかを考えてみよう。

まず、前回登場した「管理型で学習面重視」という言葉から受け取るイメージだが、これは保護者側と学校側とで、実は相当な違いがあるのではないか、という疑念が生じる。すなわち保護者側は「管理型で学習面重視」のタイプを躾(しつけ)や校則にうるさく、ガリガリ勉強させられる学校というイメージで捉えていそうなのに対し、学校側は、きちんとしていて勉強にも熱心に取り組んでいる学校という自校イメージを持っているのではないだろうか。

反対に「自主性重視で精神面重視」という一方のタイプについて保護者の抱くイメージは、自らの意志で勉強するよう導き、学習意欲を刺激してくれる学校といったところだろうか。
もっともこれとて悪くとれば、学校側の働きかけが余りなく、だらしがないという生活ぶりが想像できなくもないし、実際にそういう学校がないではない。
ただ、後者のほうが自由度が高そうなことは誰から見ても予想できて、そのことが即ち生徒文化のレベルが高いというイメージを伴うのだろう。反対に管理面が強く拘束性のきつい学習を強調されると、生徒文化はレベルが余り高くないイメージになりがちだ。保護者側も学校側も、そのようなことを意識するので、一方の人気と他方の不人気につながっているのだろう。

しかしそのわりに人気ゾーンのはずの「自主性重視で精神面重視」に自らノミネートした学校が必ずしも人気校とは言いにくいのはなぜだろうか。これは逆の「管理型で学習面重視」の学校の中にいくつかの人気校があるのはなぜか、ということと同じことだ。

一つの解答は先にも示したように、その言葉で表現しようとした内実が具体的に見ると実はとても魅力的でもあったり、またその逆でもあったりということ。もう一つは学校自身が自校のイメージを他と比較する尺度を持たないがために、「重視」といっても言葉の重みの程度は学校ごとに違っている故のギャップがあること。このギャップがそのまま期待通り、あるいは期待はずれ、という結果を招き、ひいては人気・不人気につながっているのかもしれないのである。
そして最後にこの組み合わせとは違うタイプにひょっとして違うニーズが隠れているかもしれないということも考えられないではない。つまり「自主性重視で学習面を重視」「管理型で精神面重視」というタイプの学校である。

次回以降はこの組み合わせの学校について考察してみよう。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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