暗記と完ぺき主義[中学受験合格言コラム]

「忘却曲線」というのはドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが発表したものだが、それによると完全に覚えた記憶でも、その後復習をしなければ6日後には20数%しか残っていないというものである。
この話は「だから復習は大切だ」という話につながっていくのが普通だが、逆に考えれば「だから忘れても当然なんだ」ということになる。なにやら「復習しなくても良い」と言っているようで恐縮だが、そうではなくて「忘れることを過度に恐れてはいけない」ということを言いたい。

たとえば漢字の練習帳が、なかなか予定どおり進まない受験生がいる。別に怠けているわけではないし、記憶力が特別悪いわけでもなさそうなのに、なかなか進まない。よくよくその学習方法を聞いてみると、ある程度進むと初めからやり終えたところまでのテストを行うのだが、少しでも間違えると気になってまた最初からやり直してしまうとのことだった。
つまり忘れることが気になって、新たに覚えることができないのである。これではいつまでたってもその漢字の練習帳は終わらせることはできないであろう。こういったことは、受験生本人が気にする場合もあるが、お母さんが気にして「完全に覚えてから先に進みましょうね」と指導している場合も多いようである。

練習帳などで漢字を覚える場合は、忘れることをあまり恐れてはいけない。たとえば毎日20分ほど勉強して、ある程度の範囲を終わったとしよう。もちろんまとめとしてその範囲のテストを行うべきであろうが、完全に覚えていなくても慌てることはない。せいぜい80%覚えていれば、次の範囲に進んでよいのである。

そして次の範囲を終了した時は、まとめのテストをするにしても新たに学習した「次の範囲」だけでよい。決して以前の範囲も含めて最初からやろうなどと思わないことだ。もしそれをすると、あまり覚えていないことに動揺して、また初めからやりたくなるからである。前に覚えた範囲は気にせずに、とにかく一冊の練習帳を最後まで終わらせることが大切だ。
そして終わったらどうするかと言うと、もう一度始めからやり直すのである。2度目になると知っている漢字も多いので、1回目よりもずいぶん早く進むことができると思う。こうして一冊の本を3回くり返せば、8割以上は覚えられるものである。あとは忘れないように、ちょこちょこ試験本番まで見ていけばよい。

なお暗記をする時は、目で見るだけでは当然ダメだ。「目で見る」「声に出す」「耳で聞く」「紙に書く」など、五感を使って覚えることが重要である。もちろんこれは漢字だけではなく、理科や社会の暗記項目を覚えるときも同じ。地理でわざわざ白地図を使うのは、そのためである。
このように暗記事項は忘れることを恐れず、くり返し行うことがポイントだ。よく「自分は記憶力が弱い」と嘆く受験生がいるが、くり返しが足りなかったり、あるいは五感を使っていなかったりする場合が見受けられるので十分注意したい。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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