知識をくっつける[中学受験合格言コラム]

「過去問で付けたい力」ということで、「処理する力」「整理する力」「組み立てる力」について今月は話してきた。それぞれ大切な力であるが、もう一つ大切なことがある。それは「3つの力」の基礎になる「知識」についてである。

お子さまが受験勉強を始めてから、塾の授業や自宅での演習をとおして多くの知識が蓄積されてきたと思う。ほとんどが新しい知識であり、体系的な知識というよりも「一対一対応」の知識として教え込まれた場合が多いだろう。「一対一対応」の知識というと、たとえば「社会の年代の暗記」などがすぐに思い浮かぶ。詰め込み教育の典型のように感じるが、勉強を始めたばかりの段階では知識が少ないのである程度は仕方ない。しかし今まで単独に教え込まれてきた知識が、ある時点から急激に「くっつき」始め、知識体系と言えるものが作り出される場合がある。おそらく過去問演習では、多少なりともそのような経験をする受験生が多いと思う。

過去問演習では、今まで断片的であやふやだった知識がそれぞれつながることで、より明確な全体像が現れることがある。「なんだ、そうだったんだ!」と思える瞬間である。過去問演習を実施することで、今までの知識が体系化される理由としては、問題演習をとおしてさまざまな面から問われるということである。知識は理解すべきものだが、単に覚えるだけでは本当に理解したことにはならない。いろいろな面からの質問に答えられて、初めて理解したと言うことができる。さらにその知識を人に説明したり、教えたりすれば理解を増すことができる。記述形式の問題が解きにくいのは、より深い理解が必要な場合が多いからである。

2学期から試験直前までは、過去問演習を行うことでさらなる知識がどんどん入り、今までの知識と結びついて知識体系が急激に構築される。たとえば過去問演習で読む国語の論説文では、今までに知らなかった知識が大量に入ってくる。その知識のなかのいくつかは、科目の枠組みを越えて既存の知識と結びついていく。「なるほど!」と大いに納得してもらいたい。これが本来の勉強であるとも言えるが、実は上位校の難問に対応するのにも役立つ場合が多い。

このように体系的な知識を構築してもらうのは非常に良いことなのだが、漠然と演習していても効果は薄い。よりしっかりとした知識体系を構築するためには、学習するにあたって求められる態度がある。それは新しく得た「知識」と今まで得た「知識」を、「比べる」ことである。「比べる」ということは「考える」ことである。新たな知識を得たら、その「意味」を考えることで、既存の知識体系に取り込むという作業が必要なのである。

「学びて思わざれば則ち罔(くら)し。思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し(孔子)」という言葉があるが、まさにこのことであると思う。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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