再び学校選びの観点について 宗教立別-その2[中学受験]

宗教立別-その1では、キリスト教系と我が国の伝統的宗教系学校の対比についてお伝えした。今回は、宗教が異なることによって、校風がどのように違ってくるのかを考えてみたい。

たとえば、カトリックとプロテスタント。一般的には、その校風の趣は一般にカトリック校のほうが厳格だが、プロテスタント校はその点、校風の振幅が大きいため、カトリックよりも厳しいところもあれば緩やかなところもあるのが現状だ。

たとえば、中ほどにカトリック校の厳格さを置き、厳格な学校から緩やかな学校までを横一線に並べてみるとしよう。

あくまでも私の経験値によるのだが、厳しいほうには横浜共立学園(神奈川)、その次には玉川聖学院(東京)、女子聖学院中学校高等学校(同)が続く。

逆に、最も緩やかなほうには明治学院(同)、その手前にフェリス女学院中学校・高等学校(神奈川)、女子学院中学校・高等学校(東京)などがくるのではなかろうか。
そして、中ほどには、聖公会が母体である立教(東京)や香蘭女学校(東京)が当たるだろうか。
またこうした厳格さというのは、プロテスタント校の場合は勉強というより生活指導などルールそのものについてのことと言えるだろう。

一方でカトリック校が厳格な印象を抱かせるのは学内にある修道院の禁欲的な生活実態であって、目の前にそうした人格者がいる、ということや、総じて勉強面で宿題や成績に厳しい、ということもあるだろう。
ちなみにプロテスタント校の多くは、とりわけ成績の優劣を口にしないところがたしなみのようなところがある。

恐らく受験を考えている人々が「具体的な」という事柄で期待するのはそうした「校風」の情報だろうと思う。

実は仏教系でもそうした違いがある。竹内久美子さんという名うての科学エッセイストの著書『パラサイト日本人論』(文藝春秋、1995年)にこういうくだりがある。
「……日蓮の眼はあくまで現世に対して向けられているのである。彼はあの世に往生することばかりを夢想し、現実を見据えようとしない浄土教を厳しく批判した。梅原猛氏によれば、日本の独創的な宗教の筆頭は浄土真宗だが、もう一つ挙げるとすれば日蓮宗だそうである。真宗が縄文系の人々の心を捉えた一方で、日蓮宗は渡来系の人々の心を捉えてきたということなのかもしれない……(中略)……関西人が『死んだらしまいや』と思い、この世に並々ならぬ執着を持っているらしいこと……」の遺伝的影響が宗教の好みにも現れていることを軽妙に触れている。

ここでは遺伝の話はともかく、仏教校(といっても鎌倉仏教)はプロテスタント校の振幅の大きさに似て、さすがに禅や法華経を奉ずる学校だけあって、極楽浄土よりも現実を見据える志向が確かに強いことを指摘しておきたい。

これに対して浄土宗の芝中学校・高等学校(東京)などはそうは言ってもやはりおっとりした風がある。
とは言っても、先の竹内氏の著書に関西人の現世指向の指摘があるように、同じ浄土宗系でも芝より東海中学校・高等学校(愛知)、東海より洛南高等学校・附属中学校(京都)がその校風においてより現世指向であるように思える。

なお、竹内氏はNHKの調査(1978年)になる日本人の県民意識の進行についての表も著書で引用しているが、「信仰していない」と回答している割合が当時の東京で79.1%、神奈川で78.2%、大阪で63.6%、京都で66.7%であった。30年前でこの数値なのだから、今はさらにその割合は増加しているだろうと思う。

どの校風が良いというものでもない、ご家庭の方針とお子さまの個性などを考えたうえで、学校を選ぶ際の指針としていただければ幸いである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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