再び学校選びの観点について 宗教立別ーその1[中学受験]

先日、ベネッセコーポレーション主催で5月に行った学校フォーラムでの筆者の学校選びの講演のアンケート結果を手にした。面白いのは同じ内容でも「話が具体的だった」というかたと「抽象的だった」というかたの両方がいることである。
もちろん、具体的であるほうが高評価なので、抽象的だという事は「話がわからなかった」と言っていることは言うまでもない。そこで屋上屋を架すことになるかもしれないが、当日の論点を少し別の見方も加えながら再論してみたい。

講演会ではキリスト教の学校について大きくプロテスタント校とカトリック校に分け、各々の学校文化の特徴についてお話した。大きな論点の一つは、宗教の扱いである。
キリスト教に基づく学校というと、保護者の多くのかたは、カトリック校もプロテスタント校も含まれていると思われるのではないだろうか。しかし実際には、キリスト教に基づく学校といえば、プロテスタント校に限られ、カトリック校はそこに含まれない場合が多いのだ。
ともあれ、筆者にとって興味深いのは、これらの宗教立の各校が西洋史・東洋史・日本史と分裂している我が国の歴史学の宿命のなかで、世界史をどのように扱い、解決しているかである。

先頃、「新しい歴史教科書をつくる会」の制作になる歴史教科書を都立中等教育学校が採択したことが話題になったが、歴史学は骨格が政治をフォローするものだから、どうしても一定の立場は避けられない。
キリスト教は西洋史の中核の一つだから、宗教立の学校がどのように日本とアジアを扱うのか、また一方で仏教系・神道系などわが国の伝統的宗教の学校は逆に日本史を西洋史とどう折り合わせるか。
現実には残念ながら一部の進学校が世界史を未履修にしていた実態が昨年明らかになったが、そもそも本来の世界史というべき統一的に歴史を叙述できる歴史学が、学界においてさえ成功していないことも事実なのだ。

恐らく以上のようなテーマに関心をひかれるかたは多いだろう、と思う。特に、男性、すなわち父親にそのような傾向が強いように思う。
この世界史の教養の深さ(具体的には西洋史と東洋史ひいては日本史との交錯)は、率直に言ってこれからの日本人にとって大きな武器になるだろう。
知人は高名な医師で、ご子息を武蔵に学ばせたが、受験知識としてだけでない教養としての歴史を学び、生き方の糧、考え方の骨格になるという点での期待も大きかったという。筆者も自身の子どもたちの学校選択の一つの観点になった。

しかし歴史に興味がない人にとっては相当抽象的な話ではなかろうか。筆者などはこれほど具体的な話もないと思う気持ちもあるが、恐らくそういう人にとっては、各校が世界史をどのように扱うか、解決するかについての話は、全く具体的でないのだろう。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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