無口は厳禁![中学受験]

いよいよ6年生の2学期が始まった。
暑かった夏休みも終わり、だんだん日が暮れるのも早くなってくる。朝晩はめっきりすずしくなり、少しずつ秋の気配を感じるようになる。
秋は「芸術の秋」や「勉強の秋」と言われるように、1年のうちで最も過ごしやすい季節であろう。しかし受験生にとっては、試験のプレッシャーが徐々に高まる季節だ。精神的にもピリピリしてくるので、お家のかたもかなり気を遣うことになる。

今月はつい忘れがちになる、「受験生への気配り」についてお話ししたい。

試験日が近づいてくると受験生も真剣になるから、さすがに「勉強しなさい」と言わなければならない機会は減ってくる。いろいろ口やかましく言うことがなければ、ご両親としても少しは楽になると思うのだが、逆に何も言えなくて困る場合も出てくる。

たとえばテストで思わしくない点数を取ってきたとき、今までなら「もう少しがんばろう、まだ時間はあるから!」と言えたのが、だんだん言えなくなるのだ。
なぜならだんだん時間がなくなってきていることは、受験生もご両親も知っているからである。

もちろん「どうするの? こんな点数では合格できないわよ! もう間に合わないわよ!」などとは、2学期にはなかなか言えない。
2学期以降は、だんだん叱り方も難しくなってくるのだ。

ちなみに塾の先生方も気持ちは同じで、今まで叱りまくっていた先生方もだんだんその回数が減ってくる。
そして年末から年明けのころは、逆に「ほめる」のが普通だ。あまり良くない点数でも、なんらかの良い点を見つけて希望をもたせることが必要なのである。

ところが悪い結果をほめるのはなかなか難しい。試験の内容についてはご両親よりも受験生本人のほうがよく知っていると思うので、下手にほめたり勇気づけたりしてもすぐに「ウソ」だと見抜かれる。
「叱る」わけにもいかず、「ほめる」こともできないとなるとどうなるか? 結果としては何も言えずに「無口」になってしまう。ところがご両親の「無口」が、受験生には一番怖い。
怒ってくれるうちが華であることを、受験生は知っているのである。何も言わないことが「あきらめ」に通じていることをよく知っているのだ。

受験生の前では決して「無口」になってはいけない。「叱る」ことや「ほめる」ことができないなら、解決方法を示して少しでも希望をもたせることが重要である。
実際にまだまだ希望は残されているのだから、解決策を一緒に考えることで受験生の応援をしたいものである。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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