国語の出題傾向を考える[中学受験]

 国語の出題傾向でおさえておきたいポイントは、「文種」「問題文の長さ」「設問形式」「テーマ」「分野」である。文種は説明文(論説文)、物語文、随筆文、詩に分けられるが、学校によって説明文1題に物語文1題という場合もあれば、物語文1題をここ数年続けている学校もある。また問題文の長さも、かなり学校によって異なる。非常に長い学校もあれば(渋谷教育学園幕張中など)、かなり短い学校もある。問題文が長い学校では速読力がある生徒が有利になるから、読むのが遅いお子さまであれば読むスピードを速くしなければ勝負にならない。

 設問形式には、「記述問題」「選択肢問題」「空所補充問題」「抜き出し問題」「脱落問題」などがある。学校によっては記述問題が非常に多い学校(開成、桜蔭、武蔵など)や、選択肢問題や抜き出し問題が非常に多い学校(東邦大東邦など)がある。記述問題でも100字、150字、200字と字数が多い学校や、場合によっては大学入試の小論文のような意見文を書かせる学校もある。また設問数が非常に多い、多問速答型の学校もある(女子学院など)。このように設問形式一つとっても様々であり、自分の志望校に合わせて弱点補強が必要である。

 テーマというのは問題文の主題のことである。本年度の首都圏(100校、199題)におけるテーマベスト3は、「父母子」「友人友情」「自然環境」であった。これは去年も同じで、驚くべきことに199題のうち25%がこれら三つのテーマのどれかであった。もしお子さまが来年2校以上受験したとすると、1校で平均2問題は出題するから、計算上ではどこかの試験問題で上記三つのテーマのどれかに関する問題文を解くことになる。しかもそれぞれのテーマには頻出のケースがあり、基礎知識としてそれらを持っていることはかなり有利になる可能性がある。例えば「自然環境」は「生態系」を中核に、「生物多様性」「適応」「保護保全」「感動畏敬」というケースに分類される。また学校によっては、極端にテーマが偏っていることもある。例えば麻布では、「死」に関するテーマが多く出題された。平成十七年(祖父の死)、十五年(父の死)、十四年(生まれなかった赤ん坊)、十三年(祖母の死)、十年(飼い牛の死)、七年(母親の死)と、十一年間で六回出ている。しかも「死」に関しては、「悲しみを受け止める」という言葉がキーワードになっているが、これを知っていると記述問題でかなり役立つことが多い。以上は「テーマ」という観点で中学の入試問題を分析したものだが、テーマに関する知識や出題傾向を知ることは受験生に非常に有利になるのである(詳しくは拙著「頻出テーマ活用法」参照)。

 最後の分野とは、「読解問題」「文法問題」「言葉の問題」「文学史の問題」などに分類される。大まかに言えば、男子校では「文法問題」や「文学史の問題」は少ないようであり、全体を見ても「文学史の問題」を出題する学校は少なくなってきている。「言葉の問題」は、「漢字」・「ことわざ」・「四字熟語」などであるが、学校によって出題頻度に大きな差があるのでこれも志望校の傾向を見る必要がある。

 以上、国語の出題傾向について述べてきたが、これらのポイントを使って自分の志望校における大まかな問題像を作り上げるのである。例えば「武蔵」なら、「物語文1題でそれほど長文ではないが、ほとんどすべて記述問題でしかも字数制限が無い。物語文なので、テーマは『父母子』や『友人友情』などの人間関係が多い。読解問題がほとんどで、漢字が出る年もある」ということになる。これだけでも、かなり「武蔵の国語像」をつかめたと思う。そして武蔵の試験問題で「合格最低点を取るには?」を考えるためには、まずこの「武蔵の国語像」をつかまえることが重要なのである。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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