私立中学受験の志望校決定権者は誰か その2[中学受験]

私立中学受験の志望校は誰が決めるのか、前回は保護者アンケートの集計結果をご紹介した。今回は学校側がどう見ているかということから考えてみたい。
2008年2月13日のコラムで書いた、私立中高一貫校116校が参加した学校アンケートでは、「志望校は誰の決定権が強いと思いますか?(強いと思う上位3つを記入)」という質問を行った。つまり、受験生を持つ家庭では志望校の決定権は誰が強いかを、学校に予想してもらったわけである。選択肢も保護者アンケートと同じであったので、学校アンケートと保護者アンケートの集計結果の差を見れば、受験生と保護者の実態をつかんでいる学校がどの程度あるかを分析できるのである。同時に、誰が志望校の決定をすべきか、という学校の考え方もさぐることができる。

【図1 志望校の決定権者(学校アンケート)】学校が予想する志望校の決定権者第1位

学校が予想する志望校の決定権者第2位

学校が予想する志望校の決定権者第3位

【表1 志望校の決定権者(学校アンケート)】
表1 志望校の決定権者(学校アンケート)

【図1】【表1】を見ると、学校が予想する志望校の第1決定権者は、トップが「2.受験生の母親」(57%)で、2番手が「3.受験生本人」(27%)となっている。前回紹介した保護者アンケートでの第1決定権者は、トップが「3.受験生本人」(55%)、2番手が「2.受験生の母親」(27%)で、トップと2番手が学校予想と保護者実態でまったく逆の結果になっている点が興味深い。これまで考えられてきた「中学受験の志望校決定では保護者(特に母親)の決定権が強いのではないか」という概念は57%の学校では存続していた。27%の学校では「受験生本人の決定権が強い」という受験生と保護者の実態をつかんでいることがわかる。また、学校アンケートでは、父親が第1決定権者だという回答は5%と、保護者アンケート(12%)の半分以下で、アンケートの回答を行った入試広報部の先生のほとんどが男性だったことを考えると、面白い現象である。

学校アンケートでは、「受験生本人が最も強い志望校の決定権を持つことを、どのように考えるか」についての設問はなかったので、「受験生本人が最も強い志望校の決定権を持つこと」の是非はわからない。しかし、学校が予想する志望校の決定権者が「2.受験生の母親」と回答した学校が57%もあったことから、受験生の母親が志望校の決定権を持ったほうが健全なのではないかという見方をしているとも考えられるのである。つまり、人は自分の意見をもとに考えるので、多くの学校の先生方は、志望校の最終決定は母親が行うべきだと思っているのではないかとも考えられるのだ。逆に言えば母親が父親を代理していて、本当は父親に最終権限がある、否あるべきだと考えている担当者が消費税並みのパーセンテージしかいないという歴然たる事実もまた確認できる。

もちろん実際には母親が志望校の情報収集や志望校の絞り込みを行い、絞り込んだ志望校の中で最終決定を受験生本人が行っていることが考えられる。志望校の第1決定権者を「2.受験生の母親」としている学校は、母親が志望校の情報収集や志望校の絞り込みを行っているので、最終決定も母親が行っていると考えたのではないか? それは無理もないのであって、我がことのように子どもの身を案ずる中学受験生の母親の姿に比較しうるものを、筆者は知らないのである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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