私立中学受験の志望校決定権者は誰か その4[中学受験]

これまで、私立中学受験の志望校の決定権者について、保護者アンケートと学校予想アンケートをもとに「総合的な志望校決定権者は誰か」(その1その2)、「偏差値別の志望校決定権者は誰か」(その3)という視点で見てきた。
もうひとつ、私どもの調査でわかったことは、志望校決定には男子校・女子校・共学校で違いがあるということだ。同じ子どもに対しても男の子と女の子では保護者の対応も異なるので、男子校・女子校・共学校の学校種別でも違いがあるのではないかと推測できる。今回は学校種別で「志望校の決定権者は誰か」を分析してみる。

【図1 志望校の第1決定権者(保護者アンケート:学校種別)】
志望校(男子校)の第1決定権者(保護者アンケート)志望校(女子校)の第1決定権者(保護者アンケート)
志望校(共学校)の第1決定権者(保護者アンケート)

【表1 志望校の第1決定権者(保護者アンケート:学校種別)】
志望校の第1決定権者(保護者アンケート:学校種別)
※数値はグラフに合わせて調整

【図1】【表1】は、保護者アンケート回答者452名から男子校/共学校や女子校/共学校の複合志望者119名と、志望校未定等で種別空欄の60名を除き、第1~第3志望がすべて男子校・女子校・共学校だけの志望者計273名分で集計した。どの学校種別でも志望校の決定権者は「3.受験生本人」が最多を占めていることは変わらない。男子校(志望者)は「1.受験生の父親」「2.受験生の母親」「3.受験生本人」のいずれの割合も女子校(志望者)と共学校(志望者)の中間である。女子校(志望者)は「1.受験生の父親」が極端に少ないのが特徴で、他の学校種別よりも「2.受験生の母親」が多い。共学校(志望者)は「2.受験生の母親」が極端に少ないのが特徴で、他の学校種別よりも「1.受験生の父親」「3.受験生本人」が多い。

男子校志望者は父親の志望校決定権が強く、女子校志望者は母親の志望校決定権が強いのは感覚的にも理解しやすい。また、共学校志望者は受験生本人の志望校決定権が強く、受験生本人が小学生の時に男女共学であった環境を変えたくないと考えていると推測できる。しかし、共学校志望者は父親の志望校決定権が強いのはなぜだろうか? 父親が、共学校の出身者で充実した学校生活を送れたか、または男子校の出身者で充実した学校生活を送れなかったかのかもしれない。

【図2 志望校の第1決定権者(学校アンケート:学校種別)】
志望校(男子校)の第1決定権者(学校アンケート)志望校(女子校)の第1決定権者(学校アンケート)
志望校(共学校)の第1決定権者(学校アンケート)

【表2 志望校の第1決定権者(学校アンケート:学校種別)】
志望校の第1決定権者(学校アンケート:学校種別)
※数値はグラフに合わせて調整

【図2】【表2】は、学校アンケートから志望校の第1決定権者を、男子校・女子校・共学校の学校種別で分類して集計した。%で見ると、男子校は「2.受験生の母親」よりも「3.受験生本人」と予想する学校の割合が多いのが特徴で、他の学校種別よりも多い。女子校は「2.受験生の母親」「3.受験生本人」で、その割合は男子校と共学校の中間である。共学校は「3.受験生本人」よりも「2.受験生の母親」と予想する学校の割合が多いのが特徴で、他の学校種別よりも「3.受験生本人」と予想する学校の割合が少ない。志望校決定権が最も強いのは「2.受験生の母親」と予想する共学校の先生方が62%もいるのに対し、保護者アンケートではわずか12%となっている。このギャップは共学校の先生と共学校志望者の意識のズレがいかに大きいかを示している。

ともあれ合格を勝ち取るには家庭の円満な合意形成が欠かせない。おのおのの事実上の決定権の強弱はもちろんご家庭で違いはあるにしても、調査結果はひとつの経験則の集合である、と見たい。ついては影響力の評価を腹積もりしておくに越したことはないのである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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