過去問演習の重要性[中学受験]

 「過去問演習」とは、過去に出題された志望校の入試問題を、本番の試験さながらに解いていくことである。つまり一つの試験問題を、制限時間内に、一点でも多く得点を取るつもりで解いていくのである。場合によっては、模擬試験よりも緊張するかもしれない。なぜなら4科目(または2科目)の合計点がその年の合格最低点以上であれば、「見事志望校に合格!」と言えるからである。もちろん「その年であれば」という条件は付くが、それにしてもこの迫力は受験生にとってかなりのものであろう。あまりの迫力のためか、なかなか過去問に手を付けない生徒もいる。結果を恐れてしまうのである。しかしこれは本末転倒であろう。過去問演習は、志望校における「出題傾向」を知り、自分の学力と照らし合わせてその「対策」を練るために行うものである。相手を知らなければ、勝てる勝負もみすみす捨てることになりかねない。

 逆に、過去問を楽しく演習する生徒もいる。その多くは合格最低点近く、あるいはそれを超える点数を取れる生徒であろうが、そこまで学力が付いてくれば勉強も本当に楽しくなってくるものである。しかし彼らにしても初めから合格最低点を取れることは稀であり、最初はせいぜい30%〜40%だったはずだ。そんな点数で大丈夫か?と思う方もいるであろうが、多くの入試問題の合格点が60〜70%であるから、試験本番までにその差を縮めれば良いのである。過去問を解き続けていくと、それだけで点数の差は縮む。それは志望校の試験に慣れてくるからである(問題慣れ)。もちろんそれだけでは足りないから、得点できなかった原因を解明しその部分を強化する(弱点補強)。そして試験のやり方がうまくなってくると点数がさらに伸びる(スコアメーキング:点取り)。こういった対策を試験直前まで行うのであり、あとは時間との戦いとなる。なお何回かやって30%に満たない場合は、もう少し基礎力を強化する必要があるかもしれない。

 秋も深くなってくると、のんびりしていた受験生も「やるべきことが多すぎて、時間が足りない!」という気持ちにおそわれることが多くなる。この気持ちが高じると、パニックになってしまう場合もあるが、そんなときは「他の受験生も同じような状態だから、大丈夫」であることと「これからはポイントを絞った学習が重要」であることを伝えて励ましてあげたい。そして「ポイントはどこか?」はこの過去問演習によってわかるのだが、塾では本格的な過去問演習はなかなか実施できない場合が多いので、ご家庭での実施が必要になってくるのである。これから「過去問演習」について何回かに分けて説明するので、ご家庭で実施するときの参考にしていただければと思う。

 なお過去問を出している出版社はいくつかあるが、学校ごとに5〜10年分をまとめて1冊にしているもの(「声の教育社」や「東京学参」など)と、科目ごとにその年の問題を1冊にまとめているもの(「みくに出版」など)がある。「声の教育社」や「東京学参」のほうが学校ごとの合格最低点などのデータも載っているし、解答解説も詳しいので一般向けと言えるであろう。「みくに出版」のものは“銀本”と呼ばれている電話帳程度の厚さのもので、1冊で多くの学校の問題を網羅しているのは良いのだが、1年分だけであり、解答解説も答えだけのものが多いため塾や予備校向けと言えるかもしれない。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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