2014/09/03

【英語】「生徒の英語力向上」のために今、必要なものとは① ~第1回中学校英語に関する基本調査(2008)から考える~

グローバル教育研究室 研究員
福本 優美子
小学校英語の教科化や大学入試の4技能化の検討など、動きの活発な英語教育ですが、文部科学省が発表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(2013)では、「小・中・高の各段階を通じて英語教育を充実し、生徒の英語力を向上」させることを目指すとしています。文部科学省が先頭に立って体制を整備していくとはいえ、先生方にもより一層の指導力向上が求められているといってもいいでしょう。
最近では、授業のあり方として、いかに生徒が英語を使う活動をしているか、ということが重要視されていると思いますが、2008年に中学校の英語の先生を対象に行った調査(「第1回中学校英語に関する基本調査(教員調査)」)では、「生徒が活動している時間」よりも「先生が説明している時間」のほうが多い指導型の先生の割合が半数を超えていました(図)。
一方で、先生方に英語の指導に関する悩みを聞いたところ、指導型の先生方にとくに多い悩みは、「効果的な指導方法がみつからない」「中期的・長期的な授業計画を立てる方法が分からない」「生徒の学習意欲が低い」でした。
データ_指導型・活動型別のなやみ
*「とてもそう思う」+「まあそう思う」の%。
*「指導型」は、「先生が説明している時間」の方が「生徒が活動している時間」よりも多いと回答した人(「指導>活動」)。「活動型」は、「生徒が活動している時間」の方が「先生が説明している時間」よりも多いと回答した人(「指導<活動」)。「指導=活動」「無回答・不明」は省略した。
また、中学生に英語を指導する際に「重要だと思うこと」と「実行していること」についてもお聞きしました。そこで、重要だと思いながらも実行できていないことをみてみると、「生徒が自分の考えを英語で表現する機会を作る」でした(図)。
調査は6年前のものなので、先生方の指導の実態や悩みの状況は変化していると思われますが、今回の「英語教育改革実施計画」が出る相当以前から、先生方の中にも問題意識はあったようです。
グローバル化の進展など子どもを取り巻く環境の変化に合わせて、これからの英語教育には、グローバル化に対応した教育改革や英語学習観の転換など、大きな転換がいよいよ求められてくるでしょう。そのような大きな転換には、環境や体制の早急な整備が待たれますが、先生方や保護者など大人の意識の転換ももちろん必要となります。
ただ、その芽(課題認識)はすでにあるといっていいでしょう。どう変わればいいのか、どこを変えればいいのか、課題意識を共有しつつ、課題解決に向けて一歩一歩踏み出していきたいと考えています。
次回は、生徒側から英語学習の実態と意識について研究した結果をご紹介します。