過去と他人は変えられない[中学受験]

 これは対人交渉の基本中の基本で、これをよく肝に銘じておけば人間関係はスムーズに運ぶ。

 どうしてか、というと多くの人々の人間関係上の悩みは相手とうまくいかないことで、その相手のこういうところを何とかしたいと思っているし、自分には過去にこういうところがあったからまた失敗するのではないか、などと考え込んでしまうからだ。

 しかし、他人を変えようと思って変わるぐらいなら、この世に悩みはないのであって、他人は変えられない、というところから出発しなくてはならない。同じように過去は変えられないのだから、そんなことを考えるだけ無駄なことである。

 では変えられるのは何か、誰か。それは自分自身で、しかも今からしか変えられない。そこに気付いた人はとにかく人が変わったように見事な人生を歩むようになる。

 −ということを筆者はカウンセリングやコーチングのプロからかなり早くにご教示を受けた。特に献身的に人生相談にあたられているある先生とは、個人的な交友や共通の友人もあり、こうした励ましで何人もの方々が精神的に立ち直られた実例を見聞きしたものだ。

 特に受験とのかねあいで言えば、父親がお子さまに厳しく接する態度が余りにも身につまされると母親が訴えるケースが少なくない。あるいはお子さまがなかなか言いつけ通りにならない、などというのはきりがないほどだ。

 もっともこういう相談そのものを筆者の高い有料相談にもってこられる方はいない。もっぱらそれは行きがかり上の相談であったり講演会での質問であったり、つまりタダの質問に限られる。実はそうした相手の態度を変えようと思ってもそれはムリ・ムダというものだ、とノドまで出かかるものの、それではあまりに救いがない。しかも相手はタダで聞いているというのでは、実は何を言っても芯から言葉が入っていかないものだ。従って第二の手段である他人を介在させるよう、アドバイスすることにしている。 

 つまり次善の策は、家庭教師なり塾なり信頼できる他人を入れて緊張を和らげることである。親子の間は、子どもの方にはどこかしら甘えがあり、親の方にもワキの甘さが残る。生じるスキをさらに追求しがちになる。この間に他人が入れば感情的にならず、効果的な技法で学力定着を図ってくださる。しかし、もしこのような件で有料の相談があるとするなら、本当はそれは第二の手段であって、一番効き目があるのは、「他人は変えられない」という諦念からこの問題を再構築することなのだ。何だかお金を払ってダメ出しをされているようで、あたかも禅問答のように聞こえるかもしれない。他人を変えるのではなく自分を変えられれば、相手も実はこれに応えてくれるものなのだ。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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