本を読むのは好きなのですが、設問にうまく答えられません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子(性格:強気タイプ)のお母さま


質問

物事を自分の考えのみで考えてしまうため、行動や文章が偏っています。本を読むのは好きなのですが、設問にうまく答えられません。物事を考察する力は、どうやればつくのでしょう?


小泉先生のアドバイス

いろいろな問いに慣れることで、正しく意味をとらえられるようになれる

「問いにうまく答えられない」という悩みは少なくありません。問題文の内容はわかっているのに、問われている内容が理解できないとか、まったく違ったことを答えてしまうという生徒さんです。このような皆さんには、問題文だけではなく問いにも線を引いて、注意深く読むことをおすすめします。そうすることで、少しずつですが上手に答えられるようになっていきます。それは、問いにも「型」があるからです。

試験では「問題」が提示され、「問い」が設けられます。そこでは、「問題文の内容を理解しているか?」とか、「理解した内容を表現できるか?」が試されるのが一般的です。しかし、それ以前の問題として「何が問われているのか」を理解するのが、実はなかなか難しい場合があります。出題者としては、本来問いたい内容がわかるかどうかを試したいと考えますから、複雑な問い方は避けるのが一般的でしょう。その結果、どの試験でも同じような問い方をすることが多くなるようです。

たとえば、記述問題では、

 「どのような気持ちですか?」
 「どのようなことですか?」
 「なぜですか?」

など、多くの問いがこれらの型に収れんします。生徒は、初めは問いの意味がわからなかったり、誤解してしまったりしても、問いの型に慣れてくれば徐々にその意図に沿って答えられるようになります。ですから、もしもお子さまがこのような一般的な形の問いを誤解してしまうのであれば、それは問題演習が足りないということです。そのような場合は、演習量を増やせば徐々に問題は解決されていくと思います。

たとえば、脱落問題では次のような問いの型があります。


【問題内容】すべての材料をそろえるとなると、ゆうに5000円はかかった。この時ほどお金が欲しいと思ったことはなかった。


問 次の文は本文中のどこに入りますか。それに続く文の初めの三文字をぬき出して書きなさい。

  しかし、手持ちのお金はたった300円だった。


脱落文は、「~5000円はかかった。」と「この時ほどお金が~」の間に入れるのが正解であり、答えは「この時」になります。しかし、どこに入れるかはわかっていても、問いの意図を読み間違えて、答案には「すべて」と書いてしまう生徒が少なくないと思います。つまり、「それに続く」という問いの型の意味をしっかり読めていなかったということでしょう。しかし、慣れてくれば、間違えて答えてしまうことはなくなります。頻出とは言えない脱落問題こそ、試験前に十分に練習する必要があるのかもしれません。

もちろん、めったに出題されないような問い方もあります。たとえば、次のような問題です。


【問題内容】犬の調教がうまいヒロシだが、その日に限ってなかなか犬がヒロシの指示に従わない。そんなヒロシに、道子は「私にもやらせてくれるかな」と言った。(なお、設定としてはヒロシと道子は互いに反発している間柄とする。)

問      線部のことばを、ヒロシは文字通り受け取っていないようです。それではどのように受け取ったのでしょうか。この道子のことばを、ヒロシが受け取ったように書きかえなさい。


もし問いの中で、「ヒロシは文字通り受け取っていないようです」という条件がなければ、「『道子も犬の調教がやってみたい』とヒロシは受け取っている」と考えてもおかしくないかもしれません。しかし、「文字通りではな」く、しかも「互いに反発している」のであれば、「『(ヒロシのヘタクソ)自分だったら上手にできるかもしれないと、道子が思っている』のだろうと、ヒロシが受け取っている」と考えるべきでしょう。すなわち、「自分だったらできるかもしれない」が正解(例)になります。

このような問い方はそんなに多くは出てきませんから、本番の試験で初めて遭遇する場合もあるかもしれません。そんな場合でも、「文字通り受け取っていない」という箇所に線を引き、さらに本文にある「ヒロシと道子は互いに反発している間柄」という設定を論理的に考えるようなことを日頃から行っていれば、本番の試験場でも正解に示したような答えを導き出せるようになると思います。このような応用力を必要とする問題でも、いろいろな問いに慣れることで、正しく意味をとらえられるようになれるということです。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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