小学生の我が子を英語好きにするために親ができること【前編】
これからは英語がますます大事になるということに異論のあるかたはあまりいないでしょう。それでも、保護者のほうに英語に対する苦手意識があって、お子さまに何をどう教えれば良いのかわからないことも多いようです。小学生の時期から英語に親しむことの大切さや保護者としての心構えについて、英語教育研究を専門とするベネッセ教育総合研究所・グローバル研究室室長の加藤由美子氏が解説します。
「勉強」ではなく「言葉」として英語に出合わせよう
最初に、どうして小学生の時期から英語に親しんでおくと良いのかをお話ししましょう。そこには、今後お子さまが英語を身につけていくことをサポートするうえでのヒントが含まれています。もしあなたが英語があまり得意ではないとしたら、ほとんど理解できない英語の音声をずっと聞かされたり、英文を延々と読まされたりした場合、きっと強いストレスを感じるでしょう。これは「わからない」という状態が気持ちの良いものではないからです。しかし、英語を習得するためには、ある程度、わからないという状態を受け入れて、話し手の表情やジェスチャー、絵や写真などの助けを借りながら自分なりに意味を想像するなどして学習を続けることが欠かせません。
こうしたストレスは、年齢が下がるほど感じにくいですから、できるだけ早い時期に「勉強」としてではなく、意味のやり取りをする「言葉」として英語に出合い、たくさん聞いたり、たくさん話したりしておくことが大切なのです。幼児期から始める場合にも同じような利点はありますが、小学生の時期には記憶力が高まって学習の積み重ねができたり、目標をもって頑張ったり、学習習慣ができて継続しやすくなったりする良さがあります。保護者の中には、英語にはまったく自信がないというかたもいるでしょう。また受験勉強は頑張ったものの、聞いたり話したりするのは苦手というかたも多いのでは。たとえそうであっても、小学生のお子さまと一緒に英語に対して前向きな気持ちをもつように心掛けましょう。
「英語ができないと、入試で苦労するよ」「将来、良い仕事に就けないよ」など英語に対するネガティブな感情をもたせたり、英語を学ぶことを義務のようにしてしまうと、逆効果になりかねません。「英語ができると、海外旅行に行ったときにたくさんの人と話ができるよ」「いろんな仕事ができる可能性が広がるよ」など、「英語ができるとこんなに良いことがある!」というポジティブな気持ちに導くことが、英語を好きになるための第一歩となります。
小学校の「外国語活動」の内容を知っていますか?
現在、小学校では基本的に5年生から「外国語活動」として英語を学習していますが、最近は低学年からスタートする学校も少なくありません。お子さまの英語学習をサポートするためには、その内容を知る必要がありますが、保護者の中にはご自身が受けた中学校以降の英語の授業をイメージするかたがとても多いです。しかし、実は小学校の外国語活動は、中学校以降の授業とはまったく違います。まず基本的に「読むこと」「書くこと」や「文法」は教えません。これは、「まだ難しいから」という理由ではなく、文字の前に音声として自然に英語に親しませるという言葉の習得の理屈にかなった方針があるからです。そのため、中学校以降のように教科書とノートを開いて勉強するのではなく、英語の歌を歌ったり、ゲームの中で会話をしたり、といった活動が中心となります。
ただ、最近、小学校英語に関する教育政策は大きく動いており、2020年度をめどに小学校5・6年生では「教科」として教えられる予定です。「教科」になっても、まずはゲームの中などで「聞くこと」「話すこと」を通して英語の音声に親しむことから始めるという方針は大きく変わらないと見られていますが、外国語活動にはなかった評定(5段階などで評価すること)が導入されるかもしれません。そうなると、先生は今よりも「どういう力を身につけさせるか」という目標を強く意識して指導するようになるでしょう。評定にこだわり過ぎて、英語を楽しんだり親しんだりすることがおろそかになるのは良くありませんが、成績が振るわなくて苦手意識をもってしまうのもまた避けたいものです。
2020年度というと随分先のことに感じるかもしれませんが、実際はほとんどの学校では移行措置として2018年に教科として始まると考えられます。また小学校3・4年生には「外国語活動」が導入されることも予定されています。
【後編】では、お子さまの英語学習をサポートする具体的な方法を紹介します。