見えてきた部活動の将来像 各地の「地域移行」の状況は?

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中学校の休日の部活動を地域や民間で担っていく「地域移行」の取り組みが、2023年度から始まっています。これまでのように学校の先生が指導するのと、どう違うのでしょうか。各地の事例から探ってみましょう。

この記事のポイント

部活動の指導を続けるのが難しい現状

国が部活動の改革を進めるのには、幾つかの背景があります。まずは休日の練習や引率などによる教員の業務負担を軽減し、働き方改革を進めることが一つです。
もう一つは少子化により、学校ごとに部活動を運営することが困難な状況を解消し、子どもたちがスポーツや文化芸術活動に親しむ機会を確保することです。

運動部活動に関しては2022年6月に、文化部活動に関しては同年8月に、それぞれ検討会議が提言を公表し、段階的に「地域クラブ活動」への移行を進めることになりました。

運営は地域のクラブや民間が担う

学校の部活動と、地域クラブ活動の違いは何でしょうか。これまでの部活動は、学校が主体となり、主に学校の中で行われ、教員は顧問として指導や各種の業務を担ってきました。
一方、地域クラブ活動の場合は、地域のスポーツ団体や文化芸術団体、民間のクラブ、学校関係の組織や団体などが担います。活動場所も、地域の体育館や公民館などに広がります。専門家の指導を受けられたり、自分の通う学校以外の子どもと関われたりするのも、地域クラブ活動の利点です。

多様な先進事例、民間のアイデアも

愛知県半田市では、さまざまなスポーツを楽しめる総合型地域スポーツクラブ「NPO法人ソシオ成岩スポーツクラブ」が、市内の学校の部活動の受け皿として機能しています。

スポーツ庁によると、平日は学校の部活動に所属し、週末にクラブ内の同じ種目のプログラムに参加する生徒や、中学の部活動にない種目に取り組む生徒もいるとのことです。同市は2024年度9月より、長期休業期間も含めて土日祝日は中学校の部活動を実施しない方針を掲げています。

中山間地域にある中学校では、学校外の練習会場への移動手段を確保できるかが地域移行のカギになります。
複数の中学校が合同で部活動を行っている山口県美祢市では、アプリと乗合タクシーを使って効率的な送迎を試みるなど、民間の知恵も活用しています。

山梨県市川三郷町立市川中学校では、町を拠点に活動する市川三郷吹奏楽団が、吹奏楽部の指導に関わっています。土日のどちらか、団員が生徒のパート練習や合奏に混ざってアドバイスを行います。

まとめ & 実践 TIPS

地域移行といっても、部活動の種類や地域の実情などにより、さまざまなスタイルが考えられます。国は2023年度から25年度までの3年間を休日移行の「改革集中期間」と位置付け、平日の移行もできるところから取り組むよう求めています。
子どもの数が減り、教員の多忙化解消も進まない中、部活動改革は待ったなしの社会課題です。
乗り越えなければならない課題は多いのですが、地域全体で新たな部活動の形を模索していく必要があります。

(筆者:長尾 康子)

※スポーツ庁
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/1372413_00003.htm

※経産省「未来のブカツ」
https://www.learning-innovation.go.jp/news/verify-2022/

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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