通学時間を考える その4[中学受験]

前回は、学校難易度別に平均通学時間を分析した。
今回は、限度通学時間を入試の難易度で分けて分析してみたい。限度通学時間の場合、保護者アンケートは「我が子にとって許容限度となる通学時間データ」で、学校アンケートは「クラスで最も通学時間が長い生徒のデータ」で、両者は、直接比較することはできない異質なものである。保護者アンケート、学校アンケートとも各アンケート内のカテゴリ同士を比較し、傾向や特色を分析する。

【図 志望校の限度通学時間(保護者アンケート:難易度別)と在籍生の限度通学時間(学校アンケート:難易度別)】
志望校の限度通学時間(保護者アンケート:難易度別)と在籍生の限度通学時間(学校アンケート:難易度別)
※百分比(%)は小数第1位を四捨五入して表示した。四捨五入の結果、各々の項目の数値の和が100%とならない場合がある。

【図】を見ると、保護者アンケートでは、偏差値60以上と偏差値50~60未満の学校は同じような傾向で、偏差値50未満だけが多少異なる。偏差値50未満は、限度通学時間が比較的長い「3. 70~90分未満」(32%)で他のカテゴリよりも%が高い。しかし、超遠距離通学となる110分以上では0%である。偏差値50未満を志望する保護者は、その3の平均通学時間でそうであったように、限度通学時間でも、多少通学時間を犠牲にしても、他の志望校選択要素を優先する傾向があるが、超遠距離通学となる110分以上となると通学時間を考慮して「通わせられない」と判断することがわかる。
保護者アンケートの限度通学時間は90分未満が約90%を占めており、90分以上は約10%となり、「4. 90~110分未満」からは急激に%が減少することから、一般的に言われる「90分が許容限度となる通学時間」はここから来ているのかもしれない。保護者アンケートでは、90分以上になると%が急に減少し、「3. 70~90分未満」が保護者の考える通学時間の限界で、限度通学時間は平均値となる80分程度と考えることができる。つまり、限度通学時間は、90分から少し短くなっているのではないかと思われるのである。

学校アンケートでは、すべての学校カテゴリで在籍生の限度通学時間のトップは、「5. 110~130分未満」となっている。しかし、2番手についてはカテゴリ間で様子が異なる。偏差値60以上では「6. 130分以上」、偏差値50~60未満では「4. 90~110分未満」、偏差値50未満では「3. 70~90分未満」と、平均通学時間同様、学校難易度が高いほど明確に限度通学時間が長くなっている傾向がわかる。また、偏差値50未満の学校では、「5. 110~130分未満」(38%)の超遠距離通学の学校と、「3. 70~90分未満」(30%)の限度通学時間が保護者の感覚に近い学校の2グループに分かれていることが特色となっている。同じ難易度でも遠距離通学者が多い学校と少ない学校に分かれることは興味深い。

保護者として、通学時間の優先順位は高い。今後ますます少子化傾向が進むと、年々、平均通学時間・限度通学時間は短くなることが予想される。今後は、毎年、通学時間のデータを取り、推移を観察していきたい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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