野田クリスタルから子どもたちへ「やりたいことがあるなら今すぐに動いて」
- プログラミング
「ゲームプログラミングをしたいけど時間がない
「ゲームクリエイターになりたいけど、コミュ力も必要なのかな……」
プログラミング必修化も始まり、ゲーム作りに取り組む子どもが増えています。
初心者でもゲームプログラミングが楽しめる『野田クリスタルのこんなゲームが作りたい! Scratch3.0対応』(野田クリスタル・廣瀬豪著/インプレス)を出版したお笑い芸人の野田クリスタルさん(マヂカルラブリー)。ゲームクリエイターとしても活躍する野田さんに、ゲームを作りたい子どもたちのモヤモヤを聞いてもらいました。共同作業の重要性がいわれる今、コミュニケーションが苦手な人はどうしたらいいのでしょう。
今小学生だったら、授業中にフォートナイトをやっているかも
──小中学校で一人1台端末を使った学習が進められています。野田さんが小学生の時学校に端末を持ち込めていたら、どんなふうに使っていましたか?
野田クリスタル(以下野田):もし、今自分が小学生でパソコンかタブレットを学校で使えたら……授業は聞いてないでしょうね。YouTubeは当然見ます。フォートナイトもやってるかもしれません。ゲームは授業中も休み時間もめっちゃやってるでしょうね。
──それなら、今の子どもたちの環境は恵まれていると思います?
野田:それはちょっとわからないですね。僕はそれでうれしかっただろうけど、スポーツが嫌いな子もいればパソコンが嫌いな子もいるし。みんながみんなうれしいことはないでしょうね。パソコンとかプログラミングとかは、なかなか難しいので。
──そうですね。そんな中ゲーム作りに挑戦していて、野田さんにあこがれている子も多いです。ゲーム作りの心得を教えていただけますか。
イヤなことはしないけど、好きなことをやるためにイヤなこともやる
お悩み:途中で飽きたり忘れたりしてゲームが完成しない。宿題もあって忙しい。(悠・小5)
──ゲームを作りたい子に聞くと、塾や授業では取り組むものの、その後ゲームが完成しないことがよくあるようです。野田さんはもともと根気があるんですか?
野田:根気強いとは思わないです。でも途中でやめると気になっちゃうじゃないですか。さんざん書いたコードが、途中でやめたら無駄になるって。そっちのほうがイヤですね。
──作りかけでうっかり消えちゃったことはありますか?
野田:まあちょいちょい消えてますね。あれ? あのゲームどこ行ったんだろとか。もし書いてる最中に何かのトラブルで全コードが消えたとしたら、全コード書き直すんじゃないですかね。ミニゲームだとあって1,000行ぐらいだからいつでも書き直せます。
──そうやって完成させてきた経験があるから、やりたいことに集中してがんばれるようになったのかも……。
野田:イヤなことはやらないように生きているとは思います。なるべく好きなことをやっていきたいし、好きなことがやれないんだったら、やれるようにするためにイヤなこともするという感じです。
ストーリーを作るのが好き。作ったゲームを友達にやってもらうことはなかった
お悩み:将来ゲームクリエイターになりたい。チームで制作するためにはコミュ力が必要そうだけど、コミュ力がないので不安。(こえだ・中2)
──「学び合い」がすすめられていますし、ゲーム作りでは共同制作や評価もあります。野田さんも小学生の時、RPGツクール(ゲームを作れるソフト)で作ったゲームを友達にプレイしてもらいましたよね?
野田:やってもらってないですね。ゲームを作ってること自体周りに話してないですし、自分がやるだけです。
──人に見せて感想をもらいたくなりませんでしたか?
野田:人にやらせるつもりで作ってなかったし、子どものころから自分で勝手にストーリーを作ってるのが好きで。妄想しては作るといった感じでしたね。プログラミングでゲームを作るようになってからも、プライベートで誰かにやってもらったことは一回もないです。
──そうなんですね。野田さんは多くの人が関わるゲーム制作の仕事もしているので、コミュニケーション能力が高いのかなと思っていて。
野田:僕はコミュ障ですね、完全に。人にめっちゃ言われます。
自分では思ってなかったんですけど、「コミュ障」という言葉を知ってようやく「ああそういうことだったのか」と思うようになりました。
コミュニケーションが苦手なら、コミュニケーションしなくてもやりたいことをやる方法を考える
──どういうことでしょうか。
野田:たとえば、ライブの打ち上げとか人と一緒に帰るとか避けてたし、そもそも「イヤなこと」だと認識していて。みんな本当はやりたくないのに無理してがんばってると思っていたから僕はやらなかったんですよ。
そしたらみんな思いのほか楽しんでるようで「あ、イヤなことじゃないんだ」と知った瞬間、いわゆるコミュ障といわれるものだったんだなと自覚しました。
──でも、コミュニケーションはとれているような?
野田:それは技術のおかげです。お笑い芸人として生きるうえでの技術。これが仕事ではありませんとなった瞬間、こうやってお話するのも相当厳しくなってくるとは思うんですよ。
──なるほど。お笑い芸人やゲーム開発者としてふるまう技術があるので、コミュニケーションが得意だったり積極的だったりしなくても、ご自身は問題を感じていないということですよね。
野田:まったく感じてないですね。
──「みんなで協力して制作」にプレッシャーを感じている子にとって、ヒントになりそうな気がします。
野田:「コミュニケーションがイヤ」であれば、極力コミュニケーションせずにやりたいことをやれる方法を考えるべきですね。コミュニケーションを突き詰めるより、自分のやりたいことを突き詰めた結果、人が寄ってきてくれるふうにもっていったほうが楽じゃないかと思います。
「人としゃべるのが苦手だったら練習して克服する」発想もあると思いますが、人生は常に本番です。苦手なことに取り組んでいる最中も、下手な状態で常に人に評価されているんですよ。自信も失われていくだろうし、だったらイヤなことはイヤで、無理して伸ばさなくていいと思って生きています。
やりたいことがあるなら、今すぐ動いて
お悩み:細かいクオリティーにこだわってしまって、先に進めない。(ちり・小4)
──「スーパー野田ゲーPARTY」制作資金のためのクラウドファンディングにたくさんの人が参加していました。いろんな人が素材協力してくれたことで、テイストがバラバラになってしまうといった課題もあったのではないでしょうか。
野田:難しかったですね。ペットの写真を募集したんですが、まず趣旨を人に伝えることがとても難しいです。ペットだけを切り抜きたいのに飼い主の手も写っているとか「どういうこと?」と思うこともありましたが、最終的には「まあ面白いか」ってそのまま使っちゃいました。
真剣であればあるほど追い込まれちゃうことがありますけれども、そんなときは「面白いんじゃね?」って考えてみることが大事かなと思います。
──逆に魅力になることもありますよね。野田さんのようにゲーム作りをしたい子どもたちがたくさんいます。ぜひメッセージをお願いします。
野田: やりたいことがあるなら、今すぐ動いたほうがいいと思います。やりたいという熱量に勝るものはないので。「甘すぎる」「知識がなさすぎる」とか周りにごちゃごちゃ言われると思うんですけれども、そういう人はばい菌か何かだと思って熱量で蹴散らしてほしいですね。
まとめ & 実践 TIPS
ゲーム作りでもなんでも「やりたいこと」があればモチベーションに。苦手なことは苦手なままで解決方法を考えることも、行き詰まったときの良いアドバイスになるのではないでしょうか。
執筆/樋口かおる
野田クリスタルさんの、独学の方法や金言だらけの向き合い方はこちらから
教えて! 野田クリスタルさん「なぜ独学プログラミングでゲームが作れるようになったの?」
『野田クリスタルのこんなゲームが作りたい! Scratch3.0対応』(野田クリスタル著/廣瀬豪著、インプレス刊)
お笑い芸人・ゲームクリエイターの野田クリスタルさんとゲームクリエイターの廣瀬豪さんがタッグを組んでScratchを用いた本格的なゲーム作りを解説。アクション・カーレース・格闘アクション・シューティング・アクションRPGとバラエティーに富んだ5本のオリジナルゲームを収載し、Scratchの基礎から初級~上級までのゲーム作りを段階的に学べます。すぐに遊べるサンプルデータ付き。
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