小中学校の給食費を滞納するとどうなる? 払えない場合の就学援助についても紹介

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学校給食にかかる経費のうち、保護者が負担する費用「給食費」。コロナの影響で家計が急変して給食費を払うことが厳しくなって、頭を悩ませているご家庭があるかもしれません。また一方で、給食費の滞納については、学校側でも問題になっています。
この記事では、給食費に関する疑問に対して、ファイナンシャルプランナーが回答します。

この記事のポイント

Q学校給食費とは?

学校給食法によると、学校給食費とは、学校給食の運営で必要な経費のうち、保護者が負担する費用のことを指します。保護者が負担する経費は、食材料費と光熱費の一部となり、施設や設備に要する経費と学校給食の運営に要する経費は、学校の設置者が負担します。

学校給食法 第四章 第十一条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000160

Q給食費はいくら?

給食費は、都道府県別に金額が異なっています。「令和3年度学校給食実施状況等調査の結果」によると、小学校の給食費月額の平均は4,477円で、中学校の平均額は5,121円でした。

参考までに都道府県ごとの小学校と中学校における平均月額の最高額と最低額を確認してみましょう。小学校では、長野県の5,025円が最高額となっており、最低額は鹿児島県の3,623円です。一方、中学校でも、長野県の5,806円が最高額となっており、最低額は三重県の4,017円でした。

出典:
・令和3年度学校給食実施状況等調査
https://www.mext.go.jp/content/20230125-mxt-kenshoku-100012603-1.pdf

・都道府県別学校給食費平均月額(公立小・中学校・夜間定時制高等学校)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400802&tstat=000001016540&cycle=0&tclass1=000001126135&tclass2=000001126137&tclass3val=0

Q給食費の支払い方法は?

主に以下の支払い方法があります。
・口座振替払い
・納付書での支払い
・クレジットカード払い
・スマートフォンによる決済
・児童手当からの天引き
・生活保護や就学援助の現物給付

文部科学省が2018年に公表した調査結果(※)にある、「学校給食費の徴収方法」についてのアンケート結果(複数回答)によると、一番多く採用されている支払い方法は、「金融機関からの口座振替」(小学校と中学校を合計した86.5%)でした。

口座振替以外には、「児童生徒が直接担任や事務局員に手渡し」(同上 40.2%)、「保護者が指定金融機関に振り込む」(10.3%)などもありました。

※ 平成28年度の「学校給食費の徴収状況」の調査結果について
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11402417/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/07/1407551.htm

Q給食費を滞納するとどうなる?

滞納が発生した場合、手紙や電話、家庭訪問などによる督促が行われるほか、督促に応じない場合は法的措置が講じられることもあります。

文部科学省が作成した「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」には、「督促をした後、相当期間が経過しても給食費を支払われなかった場合には、訴訟手続きが行われることがある」と明記されています。

しかし、一方で、「できる限り訴訟手続きによらない納付の働きかけ」の重要性とともに、「徴収の停止や履行期限の延長すべき事情があるか、その他訴訟手続を行うべきではない特別な事情があるかについて把握する上でも、督促とは別に、文書や電話、家庭訪問による納付指導を行うこと」の必要性についても述べられています。

なお、学校給食費の徴収や管理の主体は2つあり、1つ目は、学校独自の会計(私会計)での管理で、2つ目は自治体での会計(公会計)での管理です。

たとえば、学校独自の会計の場合は、滞納者への督促が学校から行われることになります。公会計化さている場合は、地方公共団体による督促が実施されます。
前述の「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」は、公会計化された地方公共団体が参考にするガイドラインです。

文部科学省が2018年に公表した調査結果(※)より、学校が「実施した取り組み」を確認してみましょう(調査対象572校)。
一番多く行われた取り組みは「学校が電話・文書により保護者へ督促」(572校中167校が実施)で、次に「学校が面談や家庭訪問により保護者へ督促」(同118校)、続いて「自治体が保護者へ直接督促」(103校)でした。

出典:学校給食費徴収・管理に関するガイドライン P52~54
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/__icsFiles/afieldfile/2019/07/31/1419091_1_1.pdf

※ 平成28年度の「学校給食費の徴収状況」の調査結果について
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11402417/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/07/1407551.htm

Q給食費未納の児童生徒はどれくらいいる?

文部科学省が2018年に公表した調査結果(※)で確認すると、学校給食費が未納の児童生徒数は、小学校で調査対象13万9,557人中1,174人、割合は0.8%となっています。また、中学校では同6万7,240人中621人で、割合は0.9%となっていました。

※ 平成28年度の「学校給食費の徴収状況」の調査結果について
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11402417/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/07/1407551.htm

Q給食費未納だと、子どもが給食を食べられない?

かつて、一部の学校や自治体などが、一定期間給食費を滞納した世帯に対して、給食の提供を取りやめることを明言したことが話題になりました。しかし、筆者がネットや電話などで独自に調査したところ、給食費が未納になっていることで、実際に給食の提供を取りやめている学校や自治体の存在は、確認できませんでした。

現在、経済的な理由で給食費が払えない世帯に対しては、就学援助制度(後述)の利用を促すことが主流となっています。それらの取り組みにより、「未納状態のまま」の世帯が少なくなっていることが、給食が食べられない子どもが存在しないことの1つの理由であるとも考えられます。

Q給食費未納が「いじめ問題」につながらないための対応策は?

給食費の未納が、新たな「いじめ問題」に発展しかねないことは、かつてより懸念されていました。ただし、現状として、経済的な理由で給食費が払えない世帯に対しては、「就学援助制度の利用」や「児童手当からの天引き」などの対応、つまり公費による負担が主流となっているようです。したがって、給食費の未納が直接の原因となる「いじめ」は、起こりえないとも考えられます。

なお、「就学援助制度」とは、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者が、自治体から必要な援助を受けられる」制度です。
利用できる人は、「生活保護を受けている人」および「生活保護を受けている人と同程度に困窮している人」となっています。後者の基準は、各市町村が規定しています。

補助の対象となるものは、学校給食費・学用品費・通学費・修学旅行費・校外活動費のほか、クラブ活動費やオンライン学習通信費なども含まれています。

申請する場合は、申請書に必要事項を記入し、通学している学校を通じて申し込むのが一般的です。

Q給食費は免除してもらえる?

給食費の免除制度は存在せず、経済的に給食費の支払いが困難な世帯については、児童手当からの天引きや、就学援助制度の利用を促し、給食費の未納を防いでいるものと思われます。

小沢美奈子

小沢美奈子

ファイナンシャルプランナー
大学卒業後、損害保険会社にて社員教育、研修講師などを経験。約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。ファイナンシャルプランナーとして活動開始後はWebや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。2児の母。著書「本物の節約 残念な節約」(河出書房新社)

プロフィール



メンバー全員が子育て経験を持つ女性FPのグループ。各自の子育て経験や得意分野を活かして、消費者向けのセミナーや相談業務、執筆、監修などを手掛けている。教育資金に関する情報発信の機会も豊富。

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