年収によって変わる? 教育格差
ファイナンシャルプランナーとして、教育資金のアドバイスをしているとき、とても気になることがあります。それは、お子さまが成長するほど、年収の差が教育コストに反映される現実。
お子さまが小さい時は、教育費の負担が少ないため、年収が500万円のご家庭も1,000万円のご家庭も同じくらいの習い事ができたりします。もしかしたら、年収300万円のご家庭と、年収1,000万円のご家庭が、同じくらいの費用をかけているかもしれません。
お子さまが小さい時は、生活面での収入格差を感じることはあっても、習い事などは頑張ってやりくりすれば、年収の高い家庭とも、何とか肩を並べることができてしまいます。ですが、頑張って肩を並べようとするのは、金銭面からすると間違いだと感じる機会が多くなっています。お子さまが成長するとともに、教育費を含めた生活コストがアップしていき、年収格差を埋めるのが難しくなるからです。
年収格差を感じるデータとして、年収が低いご家庭ほど、高校を卒業した後、お子さまが就職する確率が高くなるというものがあります。多くのご家庭では大学を卒業させて、できるだけ良い就職先に勤めるために小さいうちから習い事をさせたり、幼児教室に通わせたりするはずですが、年収が少なめのご家庭が小さい時に頑張りすぎると、大学時代の学費を準備できない可能性が高まるのが現実です。
「親の収入と高校卒業後の進路」
注1)日本全国から無作為に選ばれた高校3年生4,000人とその保護者4,000人が調査対象。
注2)両親年収は,父母それぞれの税込年収に中央値を割り当て(例:「500~700万円未満」なら600万円)、合計したもの。
注3)無回答を除く。「就職など」には就職進学、アルバイト、海外の大学・学校、家業手伝い、家事手伝い・主婦、その他を含む。(出典)東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター「高校生の進路追跡調査第1次報告書」(2007年9月)
世帯年収400万円未満では在学費用が3分の1を超える
次は、教育費が家計に占める割合を示したデータをご紹介しましょう。引用するのは、日本政策金融公庫が毎年発表している「教育費負担の実態調査」(平成27年度)。これは高校生以上のお子さまがいるご家庭を対象にした教育費の調査です。その中から、世帯年収に占める在学費用の割合をご紹介します。
図を見ると、世帯年収が200万円以上400万円未満のご家庭では、世帯年収に占める教育費(在学費用)が36.8%と、世帯年収の3分の1を超えています。年収400万円以上600万円未満では26.2%と、年収の4分の1程度になり、年収が600万円以上800万円未満では19.7%に下がり、800万円以上では14.8%にまで下がります。
世帯年収の3分の1以上が教育費に充てられているご家庭では、奨学金や教育ローンに頼って、学費をねん出しているご家庭が多いのが現実でしょう。負担が4分の1でも貯蓄は難しく、負担が20%に下がっても頑張ってやりくりした結果、赤字を出さずにすめばいいほうでしょう。
教育資金については、家計費の大きな割合を占める時期が必ずやってくるわけですから、自分の家庭は年収が多くないと思われるのなら、お子さまが小さい時、つまり「教育資金の貯め時」には、お子さまにかけるお金を抑え気味にすることが大切です。お子さまが小さい時にした我慢は、高校生以上になった時「あの時、我慢してよかった」と思えるはずです。
年収格差を埋めるには貯め時を逃さないのが大切
最後に、就学前のお子さまをおもちのご家庭向けに、大学時代に向けた教育資金の貯め方をご紹介しましょう。就学前のお子さまをおもちなら、学資保険に加入したうえで、児童手当には手を付けずに貯めるのが基本です。
お子さまが0歳の時に学資保険に加入すれば、ひと月9,000円前後の保険料負担で、児童手当と合わせて約400万円の教育資金が貯まる計算になります。教育資金を貯め始める時期が遅くなればなるほど、学資保険の月々の支払いは増えます。就学前は教育資金を使う時期ではなく、貯める時期。貯め時を逃して、後々後悔しないようにしてください。
※「親の収入と高校卒業後の進路」文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200901/detail/1296707.htm
※「教育費負担の実態調査」日本政策金融公庫・平成27年度
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_h27.pdf
(筆者:畠中雅子)