大学教授に聞く 「ディベート」をする意義とは?
学習能力の向上に役立つとして、教育現場で注目されているディベート。ディベートとはどのようなものなのか、日本ディベート協会の専務理事、全国高校英語ディベート連盟の副理事長であり、立教大学経営学部教授でもある松本茂先生に、学生がディベートをする意義を教えていただきました。
議論をすることが、学びになる
ディベートは「アクティブ・ラーニング(能動的学習)」の形態の1つと言えます。それは、ディベートにおいては、与えられた論題について、生徒が主体的に調べて、意見をまとめて議論をし合うからです。正解のない論題に関してディベートを行うことによって、先生が教えたことを生徒が暗記するのとは違う、能動的な学習をすることができます。
実際に何かを学ぶときに一人で本を読んで事実を覚えるよりも、誰かと一緒に調べたり議論をしたりしながら学ぶほうが、知識の定着率は確実に高くなります。自ら議論を立てたり、相手の発言の論理を追ったりすることで、論理的な思考力も伸ばすことができます。また、限られた時間の中で素早く考え、発言する力も身についていきます。
さらに、肯定・否定両方の立場から一つの論題について検討することで、一方の考え方を鵜呑みにしない批判的思考力(クリティカル・シンキング)がついていきます。
英語教育においても重要なディベート
最近では、英語教育にディベートを取り入れるケースが増えています。
英語でディベートを行う際には、英文の資料を読み、英語で立論を書き,相手が英語で話すのを聞いてメモを取り、そして、英語で質問し、反論するといったように、英語の「聞く、話す、読む、書く」の4つの技能を総合的(統合的)に使います。さらにディベートを通して、英語で「考える」という5つ目の技能も磨くことができるので、英語の力をより効果的に向上させることができます。
近年では、国公立大学の入試における英語のテストでは、「英文を読んで、その議論に対しての反論を書きなさい」といった問題が出されるなど、「立場を決めたうえで、英語で意見を書く力」を重要視する大学が増えています。英語でのディベートは、入試の準備としても大変有効です。
ディベートでは相手を尊重することが何よりも大切
ディベートを行うときは、まず、論題に関してどんな議論を立てることが可能か、チーム内で意見交換をしましょう。ある程度、先が見えた段階で、リサーチをします。関連する資料をできるだけ多く集めておきましょう。水掛け論にならないよう、肯定・否定それぞれの立場の議論をサポートする証拠資料を用意することが大切で、それらを使って立論を作成します。
実際にディベートを進めるにあたっては、進行形式をあらかじめ決めておきましょう。その際、肯定側と否定側の持ち時間が必ず公平になるようにします。話し手と聞き手の集中力などを考慮して、高校生の場合、最初から最後まで最長でも40分くらいの時間におさまるようにするとよいでしょう。
ディベートを行っている最中は、話し手も聞き手も漫然と聞くのでなく、必ずノートを取るようにしてください。
教育現場におけるディベートで特に大切なのは、「議論する相手に敬意を払う」ということです。「議論する価値のある相手だからこそ議論をする」という姿勢で行い、感情的になったり、相手を言い負かそうと威圧的になったりしていけません。
異なる発想をする人と議論をすることは、自分を高めことにつながります。ベストを尽くすのはもちろんですが、ともに高め合う活動なのだということを忘れないようにしてください。相手を尊重して丁寧な言葉づかいで議論をし、そしてディベートが終わった後には、ぜひ握手をして互いの健闘を称え合ってほしいと思います。
取材協力:日本ディベート協会 japan-debate-association.org/
全国高校英語ディベート連盟(HEnDA) http://www.henda.jp/Pages/default.aspx