困難抱える家庭に<届く>教育支援が急務

文部科学省が、家庭教育支援の推進方策を検討する有識者委員会を立ち上げました。同様の会議は2011(平成23)年にも設け、報告書もまとめていますが、今回はとりわけ、共働きや、経済的な問題などで、家庭生活に余裕のない保護者への対応も課題にしています。「子育て家庭を社会的に孤立させないために」(検討委の論点案)、何が必要なのでしょうか。

「ひとり親家庭」が抱える困難

家庭教育をめぐっては、2006(平成18)年12月、第1次安倍晋三内閣の下で教育基本法が改正され、家庭教育に関する規定が初めて盛り込まれました(第10条)。そこでは、子どもの教育について第一の責任を持つのは保護者であることを明確にしたうえで、国や地方自治体に対しても、家庭教育を支援するよう求めています。

しかし、法律で努力義務を課したからといって、家庭教育が劇的に改善されるということはあり得ません。一方で、この10年間、家庭をめぐる状況は複雑化・困難化しています。中でも深刻なのは、少なくない家庭に、貧困・格差の影が忍び寄っていることです。

厚生労働省の統計によると、2004(平成16)年に9.7%だった「三世代世帯」は13(同25)年に6.6%へと徐々に減少し、代わって「ひとり親と未婚の子のみの世帯」が6.0%から7.2%へと、増加傾向にあります。「夫婦と未婚の子のみの世帯」(32.7%→29.7%)や「夫婦のみの世帯」「単独世帯」(計45.3%→49.7%)に比べて小さいため、あまり目立たないかもしれませんが、実は、無視できない困難を抱えています。

厚労省によると、平均的な収入の半分以下で暮らしている「相対的貧困率」の割合は、2012(平成24)年で16.1%と、ほぼ6世帯に1世帯を占めていました。しかし、ひとり親世帯では54.6%と、2世帯に1世帯では済まなくなっています。生活に余裕がなければ、家庭教育に注意を向けるどころではありません。

一方、2014(平成26)年の厚労省委託調査によれば、「子育ての悩みを相談できる人がいる」と回答した母親が02(同14)年の73.8%から43.8%へ、「子どもを預けられる人がいる」が57.1%→27.8%、「子どもをしかってくれる人がいる」が46.6%→20.2%へと、いずれも激減しており、一般の家庭も含めて、子育てをめぐる地域社会のつながりが急速に希薄化している様子がうかがえます。そのしわ寄せを最も受けるのが、貧困家庭であることは、言うまでもありません。

積極的に手を差し伸べる支援が急務

7月に開かれた文科省検討委員会の初会合でも、これまでの家庭教育支援が、本当に支援を必要とする家庭に届いていなかった問題が、次々と指摘されました。

文科省も認めるとおり、家庭教育支援は、教育行政だけで行えるものではありません。民生・児童委員をはじめとした福祉分野はもとより、自治会やNPOとの連携が欠かせません。会合では、委員から、学校が困難を抱える家庭をキャッチする「貧困対策のプラットフォーム」(基盤)として、教員が外部と連携するだけでなく、たとえば地域の活動を学校施設で行うなどのアイデアが出されました。

家庭教育の講座を開設しても、本当に来てほしい家庭は、参加する余裕もないといいます。貧困対策でも、積極的に手を差し伸べる「アウトリーチ型」の支援が急務になっているのです。

※家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会(第1回)の開催について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/07/1373818.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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