「考え、議論する道徳科」は次期指導要領の先取り

小・中学校の「道徳の時間」が2018(平成30)年度以降、順次「特別の教科 道徳」(道徳科)へと格上げされます。道徳の教科化は、道徳教育を重視する安倍晋三政権の意向というだけにとどまらず、「考え、議論する道徳」へと転換することを目指したものです。そうした転換は、全面的な改訂を検討している次期学習指導要領(小学校は2020<平成32>年度から、中学校は21<平成33>年度から、高校は22<平成34>年度入学生から本格実施)を先取りするものでもあります。

「教え込み」からアクティブ・ラーニングへ

道徳教育をめぐっては、第1次安倍内閣の時の2007(平成19)年6月、「教育再生会議」第2次報告で「徳育」を教科化することが提言されましたが、同年9月の首相辞任で実現しませんでした。

その後、民主党政権も挟んで、安倍首相が再び政権を奪回すると、2013(平成25)年1月には「教育再生実行会議」を立ち上げ、いじめ問題への対応策を緊急に検討した同年2月の第1次提言の中で、道徳の教科化も改めて提案。文部科学省有識者懇談会の報告(2013<平成25>年12月)、中央教育審議会の答申(2014<平成26>年10月)を経て、2015(平成27)年3月に指導要領が一部改正され、小学校で2018(平成30)年度から、中学校で2019(平成31)年度から、それぞれ教科化されることが決まりました。現在、小学校教科書が検定中である他、教科としてどう評価するか、有識者会議での検討が大詰めを迎えています。

注意したいのは、第1次安倍内閣の時の教科化が「徳目」を教えることを目指していたのに対して、第2次安倍内閣では最初から「人間性に深く迫る教育」(実行会議第1次提言)を打ち出していたことです。中教審答申を受けて、文科省が付けたキャッチフレーズが「考え、議論する道徳科」でした。

ただ知識を覚えさせるだけでなく、問題解決的な学習や体験的な学習を取り入れて、知識をもとに考え、身に付けさせる……。こうした方向は、「アクティブ・ラーニング」(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)の導入をはじめとする次期指導要領の方向性と一致しています。道徳の教科化は、指導要領改訂を先取りする役割も担っているのです。

学校教育の「要」は変わらず

ところで、なぜ道徳科が「特別の教科」なのかというと、道徳教育自体は、教科の授業なども含めた学校の教育活動の全体の中で行うことになっているからです。道徳の時間は、その「要」という位置付けでした。こうした性格は、教科化後も引き継がれるとともに、通常の教科のように評定を付けないことから、「特別の教科」という新しい分類を設けたわけです。

なお、高校には、以前から「道徳の時間」に該当する授業はありませんでした。公民科の中に「倫理」(旧倫理・社会)などがある他、進路指導も含めた「人間としての在り方生き方に関する教育」は高校教育全体で行うべきだ……という考え方があったためです。一方、次期指導要領では、公民科に新設される必履修科目「公共」(仮称)を、高校の道徳教育の要と位置付ける方向になっています。

学校での道徳教育は、これまでも今後も、家庭教育と相まってこそ、効果を発揮します。保護者のかたも、道徳教育がどう変わっていくのか、各学校で詳しく説明を聞いておくとよいでしょう。

  • ※道徳教育(文科省ホームページ)
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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