今、小・中学校の「道徳」はどうなっているの?
小・中学校の「道徳の時間」が国語や算数・数学などと同じような「教科」になるということが以前、大きな話題になりました。実際、文部科学省は2015(平成27)年3月に学習指導要領の一部を改正し、道徳を「特別の教科 道徳」としています。では現在、小・中学校の道徳はどうなっているのでしょうか。また「特別の教科 道徳」とは、どんなものなのでしょうか。
現在は教科化に向けた移行期間
これまで小・中学校の道徳は、「教科」ではなく、特別活動などと同じ「領域」に位置付けられ、「道徳の時間」と呼ばれていました。これに対して文科省は、道徳を「特別の教科 道徳」として教科化しました。しかし、教科として道徳を実施するためには、教科書が必要となるため、民間の教科書会社が道徳の教科書を作成し、それを文科省が検定したうえで、教育委員会などが教科書を採択する時間が必要となります。このため「特別の教科 道徳」は、小学校では2018(平成30)年4月から、中学校では19(同31)年4月から、それぞれ本格実施される予定です。
現在は小・中学校とも、道徳に関して「移行期間」と位置付けられており、学校の判断によって「特別の教科 道徳」の内容の一部または全部を実施してもよいとされています。つまり小・中学校は、これまでの「道徳の時間」から「特別の教科 道徳」への移行の準備を少しずつ進めているという段階なのです。
文科省が作成した道徳用教材「私たちの道徳」の他、教科書会社などが作っている道徳用教材も、多くが「特別の教科 道徳」に対応した内容になっています。
「考え、議論する道徳」を目指す
ところで、なぜ道徳は「特別の教科」なのでしょうか。
通常の教科には、検定教科書、数値による成績評価、教科に対応した教員免許が必要となります。しかし道徳では、数値による成績評価や独自の教員免許はなじまないとされ、検定教科書だけが用いられることになりました。だから通常の教科とは異なる「特別の教科」というわけです。また数値による成績評価がないため、文科省では「他の子供達と比較したり、(高校)入試で活用したりすること」はしないと説明しています。道徳の評価は、文章による記述式で子どもを伸ばす積極的評価をする他、国や郷土を愛する態度など個別内容ごとの評価はしないことになっています。
そうなると、「以前の道徳の時間と、あまり実質的に変わらないのでは」と思った人も多いでしょう。しかし注目されるのは、教科となる道徳が、「考え、議論する道徳」を目指していることです。
これまでの道徳は、主人公の気持ちを考えようなどという「読み物道徳」の面が強かったという反省から、問題解決的学習や体験的学習を取り入れ指導方法を改革することが掲げられている他、臓器移植など答えのない問題も取り上げることが求められています。アクティブ・ラーニングの導入など、次期指導要領に向けた準備ともいえます。
そのような視点で、子どもが通う学校の道徳の授業がどうなっているのかを見てみるとよいかもしれません。
※道徳教育
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/index.htm
(筆者:斎藤剛史)