経済界が教育に期待する能力・人材とは?-斎藤剛史-

安倍晋三首相が主導する「教育再生」が進み、学習指導要領の改訂、大学入学者選抜の改革などの議論が動き始めています。これからの時代に必要とされる人材・能力とはどのようなものなのでしょうか。その一端を探るため、教育改革にも大きな影響力を持つ経済界がどのような人材や能力を求めているのか見てみましょう。

日本経済団体連合会(経団連)は、2014(平成26)年4月に「次世代を担う人材育成に向けて求められる教育改革」、15(同27)年1月に「『豊かで活力ある日本』の再生」という提言を出しています。これらの中でこれから学校教育の中で育成するよう求められているのが、国際的ビジネス社会で活躍できる「グローバル人材」と、既成概念にとらわれない変革ができる「イノベーション(革新)人材」です。そして、現在の学校教育について「画一的、知識詰め込み型の教育が多く、これからのグローバル社会を生き抜くために必要な論理的思考力や課題発見能力、ディベート力などは身につけにくい。加えて、若者の英語力は国際的にも低い」と批判しています。「グローバル人材」と「イノベーション人材」の2つが、大企業を中心とする経済界が切実に求めている人材といって間違いないでしょう。

では、具体的にどんな教育がこれから必要なのでしょうか。経済同友会は2014(平成26)年11月に出した「学習指導要領改訂に向けた意見」の中で、必要な教育として「自らの考えや意思を日本語で明確に伝える教育」「グローバル化に対応した教育」「社会の一員としての自覚や職業観の醸成を促す教育」を挙げています。グローバル化への対応に加えて、コミュニケーション能力の育成やキャリア教育の充実を求めているようです。もちろん学力は子どもたちに必要な重要要素ですが、現在の経済界は単なる学力だけではなく、学力や英語力をもとにした論理的思考力・コミュニケーション能力・課題発見能力などを身に付けた人材を求めているといえるでしょう。
実際、経済同友会のアンケート調査の結果を見ると、大学生の採用面接などで企業が重視する事項として、意識・性格的要素では「コミュニケーション能力(チームワーク力など)」「行動力・実行力」「性格・人柄」「粘り強さ・ストレスコントロール能力」など、能力的要素では「論理的思考力」「課題発見・解決力」「自己PR力・自己分析力」などが上位に挙げられています。このほか、学校教育に求める人格的要素としては、「対人コミュニケーション能力の養成」「自立心の養成」に次いで「ストレス耐性(折れない心など)」が3位に入っていることも注目されます。

「グローバル人材」と「イノベーション人材」に必要なのは「コミュニケーション能力」「論理的思考力」「課題発見・解決力」などのほか、新たに「ストレス耐性」や「ストレスコントロール能力」も求められるようになってきているようです。このような経済界の要請が、今後の教育改革にどう反映されていくかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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