保護者の力が生きるキャリア教育【中学生編】
保護者世代と比べて、学校が生徒の将来を考えて行う「キャリア教育」が盛んになっています。保護者会等でその意図や教育内容を聞く機会も多いでしょう。学校の取り組みに加えて、ご家族としてサポートできるのはどんなことでしょうか。
今、キャリア教育に起きつつある変化
中学校のキャリア教育は長らく、自分に合った職業や働き方を探すことを中心に行われてきました。「職業しらべ」や「職業体験」はその代表的なものと言えるでしょう。
確かに、将来就きたい職業を考えることは、その職業に就くための方法を知り、目標に向けて努力する力を生むという効果はあります。しかし、中学生が憧れる職業の幅には限界がありますし、実際に大学選びや就職活動を行うときには、学力や実力の面で「現実的な選択」をせざるを得ません。また、社会が移り変わるスピードが早い現代では、たとえ憧れの職業に就いても、会社が業態を大幅に変更したり、運悪く倒産したりする、といった例が珍しくありません。
こうした事情を受けて現在のキャリア教育は、何かひとつの目標を定めてまっしぐらに進むというよりも、目標は探しながらも、何が起きても自分らしく乗りきっていける強さを養う方向へと狙いをスライドさせ始めています。
学校以外の社会にも目を向けさせる
環境の変化に対する強さを身につけるために大切な要素のひとつが、視野の広さ、経験の多様さです。学校で得られる知識は、どうしても勉強に関するものに偏りがち。家庭では、勉強との関連のあるなしにかかわらず、社会の広さを知るきっかけを与えるとよいでしょう。
テレビのニュースを見ながら「お母さんはこう思うんだけど、あなたは?」と、ご自身の意見を述べたうえで問いかけてみる。お子さまが興味をもちそうな新聞記事を見つけたら紹介して、感想を聞いてみる。何かに関心をもち始めるフックになればよいのですから、必ずしも生き方や働き方に関するものでなくても構いません。
外に連れ出して、ふだんふれない世界にふれさせるのも、視野の広がりにつながります。外食の機会にこれまで食べたことがない国の料理を食べて、その国の生活に思いをはせてみたり、親戚や保護者の友人・知人が集まる機会に呼んで、異なる世代の人と話す経験を積ませたり。あまり「何かの役に立つものを」と考えすぎて押しつけになるよりも、「刺激になればラッキー」くらいの気持ちで、さまざまな経験を提供するとよいでしょう。
恥ずかしがらずに人生を語ろう
お子さまが「自分らしく生きていく」ために、家庭でできるのはどんなことでしょうか。それは、保護者のかた自身の生き方をお子さまに伝えることです。
進学、就職、転職、結婚といった、人生の選択を行う局面で、どんなことを考えてその道を選んだのか。日頃どのようなことを考えて(家事を含めた)仕事をしているのか。率直な気持ちを、ぜひ聞かせてあげてください。まねしてもらうことが目的ではないのですから、お手本のような生き方である必要はまったくありません。ふだん当たり前のように接している保護者のかたが、どのように世の中に向き合ってきたのかを知るだけで、お子さまにとっては社会で生きるとはどのようなことなのかを考える契機になるからです。
もちろん、正面きって唐突に自分の生き方を語るのはためらいがあるでしょうし、お子さまも戸惑ってしまうでしょう。「何で今の仕事に就いたの?」と聞かれたときや、ご自身の過去を振り返るような話題になったときがチャンスです。テスト対策などと違って、すぐに目に見える効果が出るものではありませんが、お子さまが将来を考えるときの「軸」にきっとなるはずです。