結局どうなるの? 大学生の就職活動‐斎藤剛史‐

2017(平成29)年春の大学卒業予定者の就職活動日程が見直され、採用選考開始が現行の8月から「6月1日以降」に前倒しされることが決まりました。就職活動日程の見直しは、これで2年連続となり、「朝令暮改」と批判する声も根強くあります。

大学生の就職活動日程は過去にさまざまな変遷をたどりましたが、2013(平成25)年度採用者からは、会社説明会などの広報活動の開始日を3年生の「12月1日」、面接試験などの採用選考開始日は4年生の「4月1日以降」、正式内定日は「10月1日以降」となっていました。ただ、これでは大学教育4年間のうちの3年間しか評価されない他、海外に留学した学生は不利になる、という不満が大学関係者から出されていました。
このため政府は、2013(平成25)年4月、大学教育の空洞化を防ぐという観点から、就職活動日程の後ろ倒しを経済団体などに要望。これを受けた経団連は就職活動日程を変更して、2016(平成28)年春の大学卒業予定者から、広報活動開始日を3年生の「3月1日以降」、採用選考開始日を4年生の「8月1日以降」、正式内定日を「10月1日以降」とすることになりました。

しかし、いざふたを開けてみると、景気回復による「売り手市場」ともいわれる状況の中で、多くの企業が3年生の夏からインターンシップによる実質的な採用活動を始めました。その結果、就職活動期間の短縮という思惑とは逆に、3年生の夏から4年生の夏まで就職活動が続くという「就活の長期化」という事態に。また早目に内定を出していた中小企業では、大企業が採用選考を開始した途端に内定辞退者が続出したため、内定を出した企業が就職活動の終了を大学生に迫る、「オワハラ(就活終われハラスメント)」の横行も社会問題となりました。

このため経団連は「採用選考に関する指針」を見直し、2017(平成29)年春の大学卒業予定者から採用選考開始日を2か月前倒しして「6月1日以降」とすることを決定しました。これに対して、文部科学省や大学などは当初、2年連続となる見直しは「朝令暮改」と反対していましたが、最終的に大学生の教育活動に支障が出ないよう配慮することを条件に合意しました。新しい指針では、採用選考は「学生の事情に配慮して行うように努める」と明記。具体的には、「例えば授業やゼミ、実験、教育実習などの時間と重ならないような設定とすることや、土日・祝日、夕方以降の時間帯の活用なども含めた工夫を行うことが考えられる」としています。

大学生の就職活動について、これだけ多様化した社会において、新卒一括採用という仕組みは、もう時代にそぐわないという意見も多くあります。その一方で、新卒一括採用がなければ大学生の就職活動は混乱する、という指摘も少なくありません。そもそも今回の見直しにしても、就職困難な社会状況だったら、また結果は変わっていたことでしょう。大学生の就職については、そろそろ大学と社会との円滑な接続という観点から、根本的に検討する必要があるのかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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